「50代の女性です。以前、移民の方が多い海外の某国で暮らしていた私。そこで、そんなことするの? とびっくりするような文化の壁を感じたことがありました」
アラフォー、アラフィフ世代の女性を中心に、実体験エピソードを寄せてもらいました。年齢を重ねると健康や人間関係、お金などさまざまな問題が発生しますが...。あなたならこんな時、どうしますか?
■上の階から花びらのように火の粉が!
約12年前の話です。
私(当時47歳)は、外国人の夫(当時44歳)と移民の方が多く集まるヨーロッパの某都市に住んでいました。
ちょうど新しい入居者がすぐ上の階に引っ越してきて、私は「どんな人たちかな?」と思いながら、バルコニーの長椅子に寝転がり、優雅に本を読んでいました。
すると、上の階から肉を焼くいい香りが漂ってきたのです。
「新しい入居者は今日は焼肉か〜、最近、肉食べてないな〜」
なんてのん気なことを考えていた私。
日本人の常識で、てっきり家の中で卓上電気コンロなどで焼いているとばかり思いこんでいました。
しかし、しばらくすると、読んでいた本の上に赤いものがヒラリと落ちてきました。
上に目をやると、上階のバルコニーから、ひらひらと花びらのように火の粉が舞い降りているではありませんか!
「ええ! 火事!?」
焦りましたが、耳を澄ましても楽しそうな笑い声しか聞こえてこず...。
なんと上の階の新入居者は、バルコニーにバーベキューセットを持ち出し、炭火で焼肉をしていたのです。
我が家のバルコニーに落ちてきたのは、そこから舞いあがった火の粉...このままでは危ないと、私は慌てて部屋から出て階段を駆け上がりました。
「危ないからいますぐやめて下さい! この街では一軒家の庭でさえ、自宅での野外の炭火バーベキューは禁止です!」
上の階の住人にそう言ったのですが、相手は「まあまあ、奥さん落ち着いて。とりあえずこれをどうぞ」と、大皿に盛られた羊肉の串焼きを差し出してきました。
それはスパイスの効いた私の大好物のシシカバブ。
突然、目の前に現れた肉にひるんだ私は「ああ、ありがとう。でも、火の粉を飛ばすのはほどほどに〜」と弱々しく言って、大皿を抱え、自分の部屋に戻ったのでした。
■文化の壁をとっぱらったのは...
以前、2カ月間だけ住んだフローリングの部屋の真ん中に、焼け焦げた跡があったことがありました。
下の階の老夫婦に「部屋の真ん中に黒い焼け焦げがあるんですが、何かあったんですか?」と尋ねると「あなたたちの前に居た住人が、部屋で焚き火して調理していたのよ」とのことでした。
室内で焚き火...それはすごいなとちょっと引いてしまうとともに、老夫婦に同情しました。
私たちがアパートを退去する日、その老夫婦に挨拶に行ったときの言葉はいまでも覚えています。
「行ってしまうのね。あなたたちはちょっとはマシだったのに...」
そう言って夫婦は悲しそうな目をしていました...。
「マシ」とは、文化的に少しは理解可能という意味だったんだと思います。
「あの老夫婦もこんな文化の壁を感じたんだろうな」と思い出しつつ、そんな異文化との紛争を一発で解決した絶品シシカバブを夫と一緒に頬張りながら、美味しい食べ物は相互理解につながるなと思ったのでした。
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