「50代の男性です。祖父の自慢は禿げ頭です。その見事な輝きの秘訣は、エステのような手入れにありました」
アラフォー、アラフィフ世代の女性を中心に、実体験エピソードを寄せてもらいました。年齢を重ねると健康や人間関係、お金などさまざまな問題が発生しますが...。あなたならこんな時、どうしますか?
■自分の禿げを受け入れたのは、祖父の禿げ頭があったから
50代の私は禿げています。
20代後半から薄くなり始めました。
当初は、高価な育毛剤を試してみたり、髪の毛に良いとされる食品を食べたりしましたが、効果はなくどんどん薄くなっていきました。
35歳の頃、ふとカツラの宣伝を気にしている自分に気が付きました。
同時に、突然思い出したのは祖父のピカピカの禿げ頭です。
私が生まれたとき、すでに祖父の頭はすでに禿げていました。
禿げていることが当たり前すぎて、祖父の頭を気にすることがなかったのです。
自分の髪がいよいよ薄くなってきて、「あっ、爺ちゃんも禿げてた」とようやく気づきました。
そして私は、もう無駄な抵抗はやめよう、禿げを受け入れて生きていこう、と腹をくくることにしました。
腹をくくると、祖父に対する尊敬の気持ちが湧き上がってきました。
自分の禿げ頭に誇りを持っていた祖父の姿が、まばゆい光と共に鮮明に甦ってきたのです。
■祖父が自慢の禿げ頭を磨くために塗っていたのは
祖父は毎朝、自慢の禿げ頭のための日課がありました。
ただ洗うだけではなく、光り輝かせるための日課です。
まず、顔と頭を洗います。
固形せっけんをしっかりと泡立て、その泡を両手で丁寧に頭全体にのばし、ゆっくりとマッサージします。
その後、洗面器の冷水をすくって石鹸の泡をゆっくり洗い流します。
まるで赤ちゃんをお風呂に入れるようにゆっくりと丁寧に洗い流します。
その所作は洗顔ではなく「清め」のようです。
そして、愛用の手ぬぐいでゆっくりと拭くのですが、この時点では決してこすったりしません。
そこまでが準備で、ここから祖父オリジナルの禿げ頭を輝かせる「頭皮エステ」が始まります。
輝かせるためのクリームは卵の白身です。
朝食で使った生卵の殻の内側に残っている白身を指で丁寧にすくっては、禿げ頭にしっかりと塗り込みます。
頭全体に白身をのばしたら、手ぬぐいを禿げ頭に被ります。
手ぬぐいの右端と左端を両手で持ち、左右交互に下に引っ張ります。
頭の乾布摩擦です。
どれほどの力を入れて磨いていたのかは分かりませんが、そこそこの速さで動かしては止め、動かしては止めを繰り返します。
手ぬぐいを取ると、見事に光輝く禿げ頭の仕上がりです。
手鏡で蛍光灯に照らされる禿げ頭の輝き具合を確かめて、祖父が満足したら終了。
生卵の白身を塗るとなぜテカテカと光るのか原理は分かりませんが、ロールパンなどを焼くときに、生地の表面に卵黄を塗って美味しそうに輝かせるのですから、科学的にも合っていそうです。
綿の布での磨き上げも、皮靴を磨く作業と似ていることを考えれば、輝かせる工程として納得できます。
禿げ頭に誇りをもっていた祖父の素晴らしい日課でした。
そんな祖父の誇りある日常を思い出し、30代半ばのときに私は禿げ頭を受け継いだ者として、堂々と誇りを持って生きていこうと決心しました。
しかし、若輩者の私は、生卵をクリームにして輝かせるほどの覚悟はまだありません。
いつかはその域に達したいものです。
余談ですが、当時朝食を作っていた母は、生卵を割るときに大変に緊張したそうです。
うっかり殻を細かく割って小さな破片が内側に入るものなら、クリームとして使えなくなってしまうからです。
私が妻にその緊張感を味合わせるのはいつになるのでしょうか。
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