<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ころちゃん
性別:男性
年齢:55
プロフィール:年齢を重ねるにつれ、春と秋が短くなってきたと感じる今日この頃です。
私が30歳だった約25年前、転職の合間に飲食店でアルバイトしていたことがあります。
店長が少し年下で、他の同僚たちはおおむね20歳を越えたくらいでしたが、その中に1人だけ、私と同年齢のアルバイト慣れしたフリーターの女性がいました。
ホールから洗い場まで切り盛りして自ら先頭を切るのですが、その反面、真面目というより要領が良いタイプ。
例えば、嫌な仕事は上手く同僚に押し付けるようなところがあり、自己主張も強くて、リーダーとして慕われるような人ではありませんでした。
とはいえ、アルバイト同士の関係は悪くなく、たびたび仕事終わりに店内で話をして過ごすことがありました。
その日も缶ビールを片手に、みんなで卓を囲んで話をしていました。
そんなとき、場を仕切るのは例の彼女ですが、その日は話題が男女の話となり、彼女は自分の男性論を披露し始めました。
「男なんて浮気してなんぼ」
「浮気できないような男はクズ」
「男の浮気であたふたする女はだめ」
「浮気されて捨てられるなら、そんな女が悪い」
タバコをスパスパ吸いながらサバサバ女を気取る彼女の姿に苦笑していたのは、私だけではなかったでしょう。
やがて彼女はその日の男性陣に対して問いかけました。
「で、みんな何人くらい浮気した?」
この場で浮気調査? いきなり聞かれて戸惑う者、茶化す者、いずれにせよ、妙な雰囲気で尋問は進み、最年長の私は最後でした。
「いや、浮気はないな」
実際、浮気をしたことがなかった私は、深く考えず正直に答えました。
すると、彼女は異様な反応を示したのです。
「嘘!」
声の大きさと語気に驚きました。
「絶対嘘! そんなのありえない!」
真剣な面持ちで、まるで私を非難するかのように見る顔に、私は訳がわからず、ぽかんとしてしまいました。
「だって男は必ず浮気をするものでしょ!」
彼女は訴えるように同意を求めます。
みんな困った表情をしていると、店長が「誠実な男だっているよね」と、私に向かい明るく言ったところ、彼女は再び怒鳴ったのです。
「絶対にそんなはずはない! どんな男だって1人の女で我慢できるわけないんだから!」
訳のわからない主張を続け、私の腕に手をかけました。
「そこまで隠すとこをみると、相当な浮気遍歴があるのね。今日はここで洗いざらい言ってもらいましょうか」
彼女は不敵な笑みを浮かべて私をにらむと、同意を得るように一同に顔を向けました。
私はここで働いた約1年の間、仲間に腹を立てるようなことは一度もありませんでしたが、この時ばかりはむっとしました。
「ごめん、今日はもう帰る」
私が腰を浮かせると即座に数人が立ち上がり、まあまあと私を宥めました。
私もみんなのことを考え、苦笑交じりで浮かした腰を下ろしました。
「そう言えばさあ...」
店長が話題を変えて、取りあえずその場を収めました。
しかし呆れたことに、彼女はふてくされた顔で「絶対ありえない! 浮気しない男なんておかしい」とぶつぶつ続けたのです。
会がお開きになると、男性陣が「あいつ本当に強烈やな」などと口にしました。
「浮気は男の甲斐性」などと聞いたこともありますが、これは本来、女性にとっては侮蔑的な言葉のはずです。
それをさらりとかわすような、男性にとって「物分かりのいい女」を演じるのは勝手ですし、実際浮気が存在するのは理解しますが、歪んだ偏見はどうしても不愉快です。
彼女が浮気をしようがされようが関係ありませんが、せめて人様の幸福を傷つけるような人生を歩んでいないことを切に祈ります。
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