<この体験記を書いた人>
ペンネーム:みわちゃん
性別:女性
年齢:61
プロフィール:中学時代から続く親友たちがいます。
「俺、膵臓癌の末期なんだ。来年の桜の花は見られないかもしれない」
2021年の9月、親友のM(60歳・男性)から突然連絡がありました。
私の祖父が膵臓癌で亡くなっていることもあり、癌の中でも一番厳しいことを痛感していた私はただただ言葉を失いました。
M、A、B、Cの4人の男子と、唯一の女子である私は、中学時代からの親友で、いつも登下校は一緒。
今になって思うと、毎日何を賑やかに話していたのでしょう。
毎年大晦日にはみんなで集まって、神社に初詣、それから海まで初日の出を見に行きました。
カラオケに行っては、アリス、長渕剛、かぐや姫、松山千春、浜田省吾などなどのニューミュージックを歌い、締めは決まってかぐや姫の「おもかげ色の空」。
Aの結婚式には、みんなで考えた替え歌を熱唱。
「僕ら5人は一生の親友です」
結婚式では涙ながらにAが宣言し、私たちにとっての記念日にもなりました。
「還暦を迎えたら、みんなで旅行に行こうよ。スペインなんてどう?」
「そりゃぁ、いいなぁ。絶対に行こうぜ」
なんて約束もしていました。
そして迎えた還暦の年、コロナ禍と重なって「ちょっと先延ばしだね」と話していた矢先にMの病気が発覚したのです。
私たちは彼に何ができるのだろう? かける言葉にも悩み、ただ話に頷くことしかできませんでした。
Mの奥さん(54歳)と2人の娘(27歳、24歳)による夜も昼もない介護。
化学療法のたびに、やつれていく体...その姿を目の当たりにすると、何もしないほうがましなのではと思うほどでした。
「俺の葬式にはショパンの『別れの曲』を弾いてよ」
Mはピアノが弾ける私と、悲しい約束をしました。
Mはサッカーが大好きでした。
日本のワールドカップ出場が決まった夜、決勝ゴールを見届け、彼は静かに旅立っていきました。
「俺らの気持ちを込めて彼を見送ろう」
送る言葉を語りかけ、Aの結婚式で歌った歌を歌い、「別れの曲」を弾き、満開の桜のもと「栄光の架け橋」にのせてMは空遠く召されて行きました。
「本当にいいお葬式だったよね。次は彼を酒の肴にして飲もう」
ここまではよかったのですが...。
「お父さんが何か家族に言葉を残しているかもしれない」
長女さんがMのLINEを開けてみたところ、出るわ出るわ赤裸々な浮気の数々!
そのあからさまなやりとりを、奥さんが私に逐一LINEで送ってくるのですから、たまったものではありません。
しかもこの浮気相手、平気な顔をして葬儀に来ていたらしいのです。
Mは、LINEの中で自分のことを「人妻ハンター」と誇らしげに言っていました。
何をやっとるんだ、この大バカ者!
「私なんか、もう20年ぐらい手をつないだこともない」
怒り心頭でどうにも気が収まらない奥さんは「遺影も遺骨もいらない」と、Mの実家に送り返してしまいました。
「M、私たちは変わらず親友だけどね。子々孫々まで名誉挽回の機会なしだよ~。みんなで飲むときは、末席だぞ」
なんて親友たちと話しています。
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