いつもと違う日曜日。脳梗塞前日の夫との時間を振り返る

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ペンネーム:向日葵
性別:女
年齢:49
プロフィール:3人の子持ちママです。私が42歳のときに47歳の夫が脳梗塞で倒れ、右半身のマヒと言語障害などが残りました。私自身も甲状腺の持病の他に、年齢とともに高血圧症や椎間板ヘルニアなどの病気が出てきています。

2011年の5月の早朝。自宅で意識をなくした47歳の夫は、近所の脳神経外科病院に救急搬送されて「脳梗塞」の診断を受けました。

当時は、3月に起こった東日本大震災の影響で、設備関係の自営業をしていた夫は毎日、休日返上で朝早くから夜遅くまで忙しく働いていました。妻の私の目から見ても、かなりハードワークだったように思います。

 

脳梗塞で倒れる前日は日曜日で、ちょうど住んでいる地域の除草作業と側溝の掃除があり、普段なら日曜日でも仕事に出かける夫も私と一緒に参加しました。作業時間は、朝の8時から11時くらいまでの3時間ほど。私は、近所の奥さんたちと除草作業を行い、夫は側溝掃除を行いました。側溝掃除は、側溝の重いフタを開け閉めしたり、消防のホースで水を流したりするため、力がある男性陣の担当です。5月にしては朝から蒸し暑かったせいもあり、作業が終わるころには皆、全身汗まみれでした。

作業終了後に、集合場所の広場で合流した夫の姿に、私は思わず目を丸めました。上半身が泥水を被ったように、どろどろだったのです。「どうしたの?」と聞くと、ホースを持つ手が滑って放してしまったため、水圧で暴れるホースを掴もうとして側溝の中で格闘した結果だとの答えが。「ケガしなかった?」と心配になった私が聞くと、夫は「ホースが胸に当たってけっこう痛かったけど、平気、平気」と、笑っていました。

配られたペットボトルのお茶を飲みながら、家に帰ってシャワーを浴びて、時計を見ると11時30分。「暑いから、蕎麦が良い」との夫のリクエストに応えて、昼食はザル蕎麦にすることに。日曜日で、3歳の長男・11歳の次女・17歳長女の3人の子どもたちも家にいたので、「いかに側溝掃除が大変だったか」の話題で盛り上がりながら、家族団らんのひとときを過ごしました。普段なら、日曜でも夫は仕事に行くので、こんなふうに家族水いらずの時間を過ごすのは、本当に久しぶりでした。

その日の夜、何を思ったのか疲れているはずの夫は、「これから皆でファミリーレストランに行こう!」と大はりきり。「家族サービスなのかな?あまり無理しないでいいのに」と思いましたが、私も午前中の除草作業で疲れていたこともあって、正直言って外食は大歓迎。3人の子どもたちも、久々の外食でとても嬉しそうでした。こうして、普段とはだいぶ違う、長い1日が終わったのです。

 

翌朝、夫は脳梗塞で倒れました。心臓からはがれた血の塊が、脳の左側の太い血管の入口で詰まったことによる脳梗塞です。当初は、命の危険もあると言われましたが、幸い血栓を溶かす点滴で開頭手術をすることなくすみました。その後のリハビリの甲斐もあり、言語障害や右半身の麻痺は見られるものの、日常生活は問題なく送ることができています。

入院当初、担当医師に、夫が日頃休みなく忙しく働いていることや、前日の側溝掃除の時に胸を強く打っていることなどを話しましたが、直接の原因を特定することは難しいとの答えでした。ただ、小さな古い脳梗塞の跡も見られることから、「体質的になりやすかったのだろう」とのこと。

医師には「因果関係は、はっきりしない」と言われましたが、毎日忙しく働いている夫を掃除にまで駆り出したことや、外食で油っこい料理を食べたことが原因になったのではないか?そんな後悔の念を拭うことはできませんでした。しかし、大切なのはこれからのこと。そう気持ちを切り替えて、夫の脳梗塞になりやすい体質を改善するべく、魚や豆腐、野菜を中心とした高タンパク低カロリーで薄味の食事を心がけ、現在に至っています。

健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
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