認知症になった母の思いが伝わってきた、切ない実家の片付け

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ペンネーム:ぴろ
性別:女
年齢:53
プロフィール:実家を片付けて処分した50代パート主婦です。実家がなくなるなんてもっと先だと思ってました。

※ 毎日が発見ネットの体験記は、すべて個人の体験に基づいているものです。

◇◇◇

父(78)が亡くなり、母(77)は認知症のため一人で暮らすのは難しく、家には誰も住まなくなるので、両親が住んでいた家を、売却か貸家にするかの処分を考えることになりました。

田舎の実家はまだ割と新しく、お金もかけて建て直したものなので、壊してしまうのはもったいなく思っていました。私達夫婦もリタイヤしているような年代だったらリフォームして住みたいくらいでした。

売るにしても貸すにしても物を片付けなければならないと思い、身近なところから整理を始めました。まずは思い出に関するもの、これから必要なものを残すことから始めました。葬儀が終わって一息ついた頃、母と一緒にアルバムを見て、思い出話をしながら母が残したい写真だけ選んで、残りは処分することにしました。母と一緒にできるのはそのくらいでした。

実家は遠距離にあるため、その時にできることはあまりなく、あとの片付けは後日、連休を使って私夫婦と妹夫婦で行うことに。

洋服やタオル類は町できれいな布類をリサイクルしていたので、そちらに出しました。母の衣類も必要なものを残して同じくリサイクルに。認知症になってから、あれだけ几帳面だった母のクローゼットはぐちゃぐちゃで、とりあえず放り込んだのだろうなという状態でした。タンスのなかも同様で雑多なものであふれていました。

実は認知症になってから数十万の現金がなくなっています。必要のないお金を銀行からおろして、なくしたら困るからと、どこかに隠して、そのまま忘れてしまうということがあったのです。それもあって、タンスや押し入れ、クローゼットをくまなくチェックしておかなければ、と思っていました。

片付けの中で母の家計簿を見つけました。直近5年くらいのものが残されていました。家計簿のなかに短い日記を書くところがあって、私達娘が知らなかった両親のくらしが垣間見えました。母の認知症がわかってから父と母はよくケンカになっていたみたいです。でもそんなことが書かれていたのは認知症と診断されてまもなくのころでした。

ここ1年くらいは、今日も何もない1日だったと判で押したように同じことが書かれていました。今、母の日常がわかるから言えるのですが、毎日何もなかったわけではなく、日記を書くときには1日の記憶が消えているんですね。習慣で書いていたけれど、何も覚えていないから何もなかったと書いていたんです。

今の母は、自分が選んだ写真を自分から見ることはありません。こちらから写真があったよねというと、毎回初めて見たような反応で写真を見ています。せつない気持ちとやりきれない気持ちでいっぱいになります。

実家は一軒家ですが、両親がリタイヤしてから建てた家なのでコンパクトな平屋です。それでもよくこんなに物があるなぁという感じで片付けても片付けても物が減りませんでした。食器も2人だけなのに山のようにありました。私達娘家族が帰省したときのための手巻き寿司用の器や、孫が小さかったときの食器など、母の気持ちがこもっていて、また切ない気持ちになりました。

売却または借家にするために、田舎暮らしのためのサイトにでも登録しようかと思っていた時に、叔父が自分のネットワークで欲しいという人がいると言ってきました。とんとん拍子に話が進み、売却することになりました。

あまりに急展開だったので、もう少し思い出にひたりたかったような気もしますが、結果的に家を売ることができてホッとしています。

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