「誕生日の夕食を、一人で済ませて、と言ってきた妻。私は一人で食事を済ませて横になりました。長年、連れ添うとこんなものなのかなと、寂しい思いで眠りにつきました。すると妻が帰ってきて...」
■こたつで眠りについていると妻は...
年月を経ると愛情も薄れるもんだな...いや、そもそもあんまり愛されてなかったかもな...などモヤモヤとした疑念を抱きつつ、一人の夕食を済ませました。
「そもそも誕生日だっていうのに、一人で魚を焼いて、冷めたご飯チンして、って、人生で最も寂しい誕生日かもしれんなあ...」
すっかり落ち込んでしまった私は、そのままこたつにもぐり込んでしまいました。
「...ちょっと、風邪引くよ」
突然の妻の声で目が覚めました。
すっかり寝入ってしまっていたようです。
「...ああ、お帰り...フアア...って、あれ?」
起き上がった私の目の前にケーキが置かれています。
「え? これ...」
「けっこうサプライズって大変ね。家でケーキ作るとバレちゃうからさ...」
そう言えば子どもたちが小さい頃は、妻はよくケーキを手作りしていました。
でも、私の誕生日には初めてのことです。
「久々だから、けっこう忘れちゃっててね」
気恥ずかしそうな妻が差し出す切り分けたケーキの上には小さなプレートが乗っています。
「生まれてきてくれてありがとう」
そう書かれたチョコレートの文字が並んでいました。
「ま、人生リスタートですからね。今後ともヨロシク!」
と言いながら頭を下げる妻の姿を見て、改めて私には過ぎた妻だ、と見直しました。
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