「久しぶりに聞く電話口での母の声は震えていました。『お父さん、がんだって...。どうしたらいいの...』母はひどくショックを受け、うろたえていました。翌日、私は急いで帰省し、母と今後のことを話し合うことにしたのです」

■母だけに告げられた「再検査の結果」
「おや、おふくろだ、珍しいな」
仕事が年末進行に入って気忙しくなっていたころ、夕方に携帯に着信が入りました。
まだ職場にいたので、席を外し、階段の踊り場で電話を受けました。
「もしもし、どうしたの? いつもは夜に家電にかけてくるのに、急ぎ?」
「ああ、ごめんね...仕事中かい?」
「まあね、でも大丈夫だよ...どうしたの? 具合悪い?」
電話口の65歳の母の声はいつになく震えているように聞こえました。
「ねえ、どうしよう、えらいことになっちゃって...」
「落ち着いて。何がどうしたの?」
「あのね、お父さん...がんなんだって...」
耳を疑いました。
今年の検診で70歳になる父が引っ掛かったそうです。
内科検診で「所見あり」で再検査を勧められ、CTなどを撮ったというのは聞いていましたが、今日はその結果を聞きに呼び出されたそうです。
「私だけ電話で呼ばれたんで、いやな予感はしてたんだけどね...」
十二指腸にガンが見つかったと告げられたそうです。
若干進行しているので、早めに治療に移りたいが、本人に知らせるかどうかは家族の意思を尊重するということだそうです。
「ねえ、どうしようかねえ、言った方がいいかしらねえ...」
母はショックもあってかひどくうろたえた様子です。
「ああ、そうだなあ...伝えなくても治療できるの? 手術とかにならないの?」
「それはやりようだって...まだそんなに進んでないから通院治療でもできるらしいけど...」
ただ治療の効果は保証できないので、できれば開腹して摘出した方がいいと言われたとのことでした。
「ねえ、どうしたらいいと思う?」
離れて暮らしている一人息子を頼ってもらえたのはうれしくもありますが、そう言われても簡単に決められることではありません。
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