「乳がんかな...」40歳の妻が綴っていたエンディングノート。「最後の一行」に泣いた夜<後編>

「乳がんの疑いがあり、精密検査を受けることになった妻。普段は明るいのですが、涙を流すことが多くなりました。ちょうどその頃、夜中に妻が寝室を抜け出すことが多くなったのです。心配になった私は、気付かれないように様子を見にいくことにしました。そこには、テーブルで何かをノートに書き込み、サイドボードにしまっている妻の姿があって...」

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■妻が密かに用意していたエンディングノート。夫が誓ったことは

「ん? また、起きてるのか」

実は、検査の日以来、たびたび夜中に妻が起き出しているのには気付いていました。

1人になりたいかも、と寝たふりをしていましたが、夕食のときのことを思い出してふと心配になり、様子を見に行きました。

ダイニングテーブルで何かノートに書き込んでサイドボードにしまっている妻の姿がありました。

声をかけにくい雰囲気を感じて、その場はそのままベッドに戻りました。

妻がベッドに戻り寝ついたのを確かめて、そのノートを確かめることにしました。

それは妻のエンディングノートでした。

「あいつ、こんなもの書いて...」

悪いとは思いましたが中を覗いてしまいました。

海外に行きたいとか、演劇を観たいとか、やりたいことが並べてあります。

そういえば最近は旅行にも行ってなかったなあ、などと思いながら眺めていて、ふと目がとまりました。

「煮物を大量に作って冷凍保存しておく」

なんて書いてあります。

なんだ? と思いましたが、妻の煮物は私の大好物だということに気付きました。

そう思った瞬間、涙があふれて止まらなくなりました。

妻を失いたくない、もしもそれがかなわないなら、彼女の願いはすべてかなえてやりたい。

そんなことを考えながら、妻に気付かれないようにそっとノートを戻しました。

2週間後、検査結果が届きました。

「...よかったあ!」

妻の表情がみるみる明るくなりました。

結果は良性の腫瘍、特に治療の必要なし、とありました。

「だから言っただろ。お前に悲劇の主人公は似合わないよ」

「え! このか弱い私をつかまえて失礼なことを!」

2人で顔を見合わせて吹き出してしまいました。

正真正銘、普段通りの生活に戻り、あのノートのことはお互いに秘密のままです。

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