「85歳の父は軽度の認知症です。普段の生活には問題はないのですが、無料サンプルを頼んでしまうこと。それだけならまだいいのですが、困るのは購入までして、さらにそれを忘れてしまうことなんです...」
親や夫、子ども、友人に職場の同僚、ご近所さん...。アラフィフ女性を中心に、みなさんから寄せられた人間関係の「モヤモヤ」「スカッと」「泣ける」実体験エピソードを、過去の人気記事をもとにして漫画で再構成しました。この時、あなたならどうしますか?
その次に実家に行くと、また別のサプリメントの、しかも再請求と書かれた請求書がありました。
「これ、払わないと駄目じゃない! ブラックリストに乗っちゃうよ!」
父を責めましたが「勝手に送ってくるんだ」の一点張り。
挙句の果ては、何故こんなものを送ってきたんだ、とメーカーに電話をかけ、「俺の個人情報を盗んだ。訴えてやる!」と大声でクレームをつける始末。
さすがにコールセンターの方もかわいそうに、と思いましたが、これでその会社からのセールス電話は二度とかかってこないだろう、とまた支払いだけ済ませました。
こんなことが何度も続きました。
そのたびに「どうして、なんで覚えてないの」とつい声を荒げてしまいます。
でも、認知症は新しいことを記憶するのが苦手で、食べたこともすぐ忘れてしまいます。
けれども昔のことは不思議なほど覚えているのです。
ずっと地道にサラリーマンをして、役員まで昇りつめ、数多くの部下を従えて定年した父です。
そんな父にまるで幼児を叱るような言葉を投げると、記憶にある昔のプライドが呼び起こされ、反発するばかりです。
父を心配して注意しているのに、そんな風に言われると、本当に泣きそうになってしまいます。
何度もそんなことを繰り返しながら思ったのは、父はいつまでも昔のままの父であるということです。
変わったのは認知症になったということだけ。
それを責めても仕方がない。
そこで叱る、以外の方法を試してみました。
「また送ってきたね。でもお父さん体は人より元気だからもう必要ないんじゃない?」
「そうだな、断っといてくれ」
元気が自慢の父は嬉しそうに答えました。
「いっぱいあるから私がもらうね」
「お前の為だと勿体ない。もう断っといてくれ」
そう言って笑う父を見ながら、叱って嫌な思いをするより、褒めて笑い合ってのほうがお互いに気持ちよくいられる、と気づきました。
それでもやはり同じことは繰り返しましたが、父にもそれは不要なもの、という意識が少しずつついたようです。
やがて父の中でブームが過ぎ去ったのか、もう注文はしなくなりました。
漫画:なみき/原案:「毎日が発見ネット」みなさんの体験記
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