法制化されていない現状において、カイロプラクティック教育を履修するうえでの注意点をまとめました。
【Q1】「WHO基準のカイロプラクティック教育」とは何ですか?
A1. 世界保健機関(WHO)は、カイロプラクターを養成する場合、患者の安全を守るためにどの程度の教育が必要かという指針(ガイドライン)を示しています。指針には、4つのカテゴリーが記載されており、
●I(A):全日4年制認可フルプログラム (※世界の国際認証取得のカイロプラクティック大学教育)
●I(B):正規コンバージョンプログラム
●II(A):限定的コンバージョンプログラム
●II(B):限定的標準化プログラム (※日本国内のCSCプログラムや臨床カイロプラクティックプログラム等)
があります。重要なのは、
WHOが学校や団体を認定・認可しているわけではない
「WHO基準」という言葉は、教育内容がガイドラインに沿っているかどうかを示す表現であり、WHOのお墨付きという意味ではない
という点です。
【Q2】「WHO基準を満たしている」と誰でも名乗ってよいのですか?
A2. いいえ、「WHO基準を満たしている」と主張するためには、第三者による客観的な評価が不可欠です。
具体的には、各地域のカイロプラクティック教育審議会(CCE)による国際認証を取得している、またはCCE認可プログラムを基礎として設計された教育であることなど、検証可能な根拠が求められます。WHOのガイドラインでは、教育プログラムにおいて、
・対面を中心とした教育
・基礎医学(解剖学・生理学など)の体系的履修
・十分な時間をかけた臨床実習
が前提条件とされています。
そのため、通信教育や短期間の研修のみで、WHOガイドラインが想定する教育基準を満たすことは、構造的に極めて困難です。
【Q3】海外の大学名が出ていれば、正規の教育と考えてよいですか?
A3. いいえ、大学名が出ている=正規の教育とは限りません。
大学には以下のような区分があります。
●正規学位課程→ 卒業すると学位が授与される、本来の専門職教育
●通信講座・研修プログラム→ 学位は出ず、継続教育や研修扱い
消費者として重要なのは、その教育は、大学の正規学位課程なのかを確認することです。
また「海外のカイロプラクティック大学を卒業したという事実」=「その国でカイロプラクターとして認められている」、という意味ではありません。多くの場合、大学卒業は学位の取得を意味するだけで、現地で就業するための免許(登録資格)とは別に定められています。
海外のカイロプラクティック大学を卒業しただけで、学位のみを取得し、現地の免許登録をしていないにもかかわらず、「〇〇政府公認カイロプラクター」「海外資格取得」などと誤解を招く表現で広告・宣伝しているケースが見受けられます。しかし、学位取得のみでは、その国の公的資格を取得したことにはなりません。これは、日本において「医学部卒業」=「医師免許取得」ではないのと同じ考え方です。
【Q4】通信制や短期の海外実習でも、十分な教育は受けられますか?
A4. いいえ、一般的には十分とは言えません。
国際的に認証されたカイロプラクティック教育(WHOガイドラインに基づく国際基準)では、対面教育を基本とすることが前提とされています。
その理由は以下のとおりです。
●解剖学、臨床検査、手技指導などは、直接的な指導と評価が不可欠であること
●臨床実習は、附属クリニック等における段階的かつ継続的な訓練が求められること
●患者安全の観点から、指導者による評価・監督体制が必須であること
このため、通信教育を中心とし、短期間の実習のみで構成された教育では、専門職として求められる安全水準に到達することは困難であると国際的には考えられています。
日本カイロプラクターズ協会では、こうした課題に対応するため、初学者向けの養成教育ではなく、すでに国内の養成校を卒業して臨床を行っている施術者を対象に、WHOガイドラインのカテゴリーII(B)に基づく期間限定のコンバージョン教育として「臨床カイロプラクティックプログラム」を提供しています。
【Q5】教育と一緒に、マットレスやサプリメントなどの販売が行われている場合、問題はありますか?
A5. はい、問題があります。
資格取得(教育)と商品販売を混同することは、国際的な医療(ヘルスケア)専門職教育の原則に反します。国際的な専門職教育では、教育・資格認定・商品販売は明確に分離されるべきものとされています。これは、教育の目的が本来の「専門性の確立」から逸脱し、「販売活動」や「組織拡大」を優先する方向へ傾くリスクがあるためです。その結果、受療者(患者)の利益よりも、事業者側のビジネス上の都合が優先される恐れが生じます。
そのため消費者としては、資格取得や教育の過程が、特定の商品購入や販売活動と強く結びついていないかを冷静に確認することが重要です。
【Q6】正規の国際基準カイロプラクティック教育かどうか、どう見分ければよいですか?
A6. 以下のチェックポイントが参考になります。
●教育は 4~5年程度のフルタイムで対面授業が中心
●解剖学(実習を含む)・基礎医学が十分に含まれている
●附属クリニックでの体系的な臨床実習がある
●カイロプラクティック学の講師はWHO基準の教育を受けたカイロプラクター
●国際認証を取得した教育プログラムである
●専門職学位もしくは称号が正式に授与される
これらが揃っていない場合、国際基準の専門職教育とは性格が異なる可能性があります。
【Q7】このような情報は、特定の団体を否定する目的なのですか?
A7. いいえ、このQ&Aの目的は、消費者が誤解しやすい用語や仕組みを整理し、判断材料を提供することです。
どの教育を選ぶかは、最終的には消費者ご自身の判断です。ただし、「WHO基準」という言葉の意味や国際的に求められる教育の構造を理解した上で選択することが、ご自身と将来の患者さんを守ることにつながります。
PDFリンク(本文)
https://jac-chiro.org/wp-content/uploads/2026/01/chiroed_faq.pdf
【参考資料】
・カイロプラクティックの基礎教育と安全性に関するWHO(世界保健機関)ガイドライン
・米国カイロプラクティック教育審議会(CCE USA)
・欧州カイロプラクティック教育審議会(ECCE)
・カナダカイロプラクティック教育審議会(CCEC)
・大洋州カイロプラクティック教育審議会(CCEA)
・国際カイロプラクティック教育審議会(CCEI)
・世界カイロプラクティック連合(WFC)国際教育憲章
・世界のカイロプラクティック登録委員会
・臨床カイロプラクティックプログラム