ハラル・イスラム市場支援に携わる立場として、2025年12月にハノイおよびホーチミンに滞在し、現地の観光、食、流通環境を確認しました。
本稿では、ムスリム対応そのものに加え、ムスリム市場の視点から見た日本のプレゼンスとは何か、そしてそれが日本企業の海外展開において何を意味するのかを整理します。
滞在中、まず強く感じたのは、日本人にとっての心理的な近さでした。
宿泊したホテルでは日本語対応が可能なスタッフが常駐しており、チェックインや館内案内も日本語で行われていました。朝食会場では、味噌汁や醤油で食べる目玉焼きなど、日本人の生活習慣を前提としたメニューが提供されていました。

日本では「海外=言語や文化のハードルが高い」と捉えがちですが、ベトナムに関しては、この前提が当てはまらない場面が多く見受けられます。
少なくとも日本人ビジネスパーソンにとっては、現地環境がすでに“受け入れる前提”で整えられていることが、進出の心理的ハードルを大きく下げています。
街中では、日本食レストランの多さも印象的でした。
寿司やラーメンといった定番メニューを扱う個人経営店が点在しており、いずれも日常利用が可能な価格帯で、安定した集客が見られました。日本食が一過性のブームではなく、生活の選択肢として定着していることがうかがえます。

一方で、日本側が誤解しやすい点として、
「日本食が多い=日本企業にとって市場が近い=ムスリム市場向けビジネスとも相性が良い」と短絡的に捉えてしまうケースがあります。
しかし、日本人にとっての快適さと、ムスリム市場向けビジネスが成立する条件は、必ずしも同じではありません。
スーパーやコンビニでは、日本から輸入された菓子や食品、日系メーカーのカップラーメンが普通に並んでいました。その一方で、日本語風の表記を用いた、いわゆる「フェイク日本語」商品も多く見られました。
また、コンブチャなど健康志向の商品が「機能性」や「ウェルネス」を訴求して販売されており、日本企業が強みを持つ分野との親和性も感じられました。
ただしここでも、日本で評価されている価値が、そのままムスリム市場で評価されるとは限らない点には注意が必要です。ハラル対応の有無だけでなく、原材料や製造背景、商品コンセプトまで含めた説明が求められます。

以上を踏まえると、ベトナムは確かに日本人にとって進出しやすい市場であると言えます。
一方で、ムスリム市場の視点から見ると、進出しやすさと、ムスリム市場向けビジネスの成功しやすさは同義ではないことも明確になります。
現地にはハラル対応が可能なOEM工場も存在しており、ムスリム市場向け商品開発の拠点として検討できる条件は揃っています。
しかし、それを実際に活用するためには、日本側が想定する進め方やスピード感を見直し、現地市場の前提条件に合わせて整理していく必要があります。
弊会では、こうした現地調査を踏まえ、日本企業向けにハラルOEMマッチングや市場整理、進出支援を行っています。ベトナムを足がかりとしたイスラム市場対応にご関心のある方は、ハラル・ジャパン協会へぜひ一度ご相談ください。
文責
ハラル・ジャパン協会
ハラルビジネスコンサルタント 田上明日菜