主婦受験生が感じた「すさまじい場違い感」それでも東大院試を目指す理由/ただの主婦が東大目指してみた

8月院試への決意が固まる   6月2日

説明会が終わったあと、すぐに帰りの新幹線に乗った。東大の説明会で、やっぱり夢を持つのって素敵だなぁって思った半面、東大生との絡みで失態を犯したことを思い出しては「私にはレベルが高すぎる」「向いていない」なんてマイナスの考えが浮かんでいた。

だって、才能があったならあの場で院生と楽しくお話ができて、当然喜んで教授とお話するに決まってるじゃない。あれしきのことでチキってしまった私が、学問の道に進んでいけるわけがない。

 

「ただっち、今日の説明会すごくよかったね。ただっちのやりたいこと、ここでできるんじゃないの?」

「う、うん......まぁね」

やりたいことはたしかにできるかもしれないけど、気は進まない。

「とりあえずさ、8月の院試受けてみなよ」

え......うそでしょ。あんな黒歴史を製造しておいて......受験?

 

今日話した東大院生が、平均的な東大院生だとしたら━━。知能指数が違いすぎて会話が成り立たなくない? あんなAIみたいな人がたくさんいるってことでしょ?

 

ああ。無理無理。絶対無理だよ。

 

3ヵ月しか準備期間がないうえに、そもそも自分との差がひどすぎる。

「でもなぁ、基礎力がないからやっぱり学部からやりなおしたいっていうか......」

少し言い訳っぽいけど、本当のことだ。私だって時間をかけて基礎を積み上げて、グリーン先生みたいな、すごい大学院生になりたいんだ。

夫にもグリーン先生を見せてあげたかったよ。

「......でもさぁ、もし合格できたら、研究に必要な基礎力は足りてるって見なされたことになるでしょ? ほら、ちゃんと口頭試問もあるし、研究計画とかもつくるんでしょ? それで合格したら、東大の大学院生になる最低基準は満たしてるってことだよ」

「で、でも......どちらかというと学部のほうに力を入れたいし......」

「だって今から3ヵ月でしょ? 本気でがんばって院試を受けてから、学部のことどうするか考えてもいいんじゃない?」

うーん、たしかにそれだとW合格もありえるのかな......まぁ、そんなのありえないけど。

「少しでも面白そうと思ったなら、挑戦したほうがいいんじゃない? スタートが遅くて厳しいかもしれないけどさ、せっかくチャンスだし」

たしかに基礎がどうとか、グダグダ言うより東大に入って、研究者になれる可能性のある流れに乗れるなら、思いっきりそれに向かって努力するほうがいいかもしれない。夢を叶えるチャンスだもの。

今日感じたすさまじい場違い感がずうっと心に残り続けているけど━━学部のことは一旦置いておいて、3ヵ月間全力でがんばってみようかなぁ。

 

......となると、早いうちにもう一度東大に行く必要がある。個人的に入りたい研究室の教授にアポをとって、研究室に赴き、自分のやりたい研究の話を教授に聞いてもらわなきゃいけない。俗にいう研究室訪問とかいうやつだ。

大丈夫かな?学生と絡んだだけで、あんなにも場違い感があったのに。

教授ってことは学生の1000倍強いってことだよね。

ああ、不安だ、こわい。でも、やってみなくちゃわからない。

きちんと受験をしてその結果落ちるのか、合格するのか。場違いだと気づいたり、勉強のやる気が続かなかったり、家事や仕事と両立できなかったり、いろんな理由で途中で受験をやめてしまうのか。またダラダラ生活のクソっちに戻って、もはや人間やめてしまうのか。

このときはこの先自分がどうなるのかまったく見当もつかなかった。

<続きは本書でお楽しみください>

 
※本記事はただっち 著の書籍『ただの主婦が東大目指してみた』(フォレスト出版)から一部抜粋・編集しました。
PAGE TOP