東京スカイツリーに採用された制震構造とは? 身のまわりのモノの技術(4)【連載】

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東京の都心には超高層ビルが林立している。地震多発国の日本で大丈夫なのかと心配になるが、備えはなされている。耐震、制震、免震と呼ばれる技術である。1963年以前、日本では高さ31メートルを超える高層ビルの建築は法的に許されなかった。しかし、技術の進歩などにより法律が改正され、100メートルを超えるビルの建築も可能になった。その最初が「霞が関ビル」である。このビルが日本の高層建築の口火を切ることになる。

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霞が関ビル以前のビル建設の地震対策には、耐震構造がとられていた。鉄筋コンクリートで柱と壁を強くして地震の揺れに対抗する「剛構造」である。しかし、100メートルを超える高層ビルに適用すると、鉄とコンクリートの量で実用に耐えなくなってしまう。

そこで採用されたのが制震構造である。地震の揺れに合わせて建物を適度に揺らし、エネルギーを分散・吸収する「柔構造」の建築法だ。

柔構造理論の発想には、古寺にある五重塔の技術が利用されている。関東大震災で多くの建物が倒壊するなか、上野寛永寺の五重塔は元の姿を保っていた。それを見た建築学者が構造を調べ、現代に活かしたのである。心柱制振と呼ぶ構造で、2012年竣工の東京スカイツリーにも採用されている。

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2011年の東日本大震災では、高層ビルが長周期振動で大きく揺れた。高層マンションでは家具が転倒し、けが人も出た。これは柔構造の欠点である。ビルは壊れないが、大きく揺れることがあるのだ。現代では、この揺れも抑えようとする技術が開発されている。それが免震構造である。

免震構造はゴムなどの変形しやすいものからなる装置の上に建物を構築し、地震エネルギーが建物に伝わりにくくする方法である。これに制震構造を組み合わせることで、地震の揺れを大きく低減させることができる。

耐震、制震、免震のどれが優れているかは場合による。建築目的に合った技術が採用されているのだ。

涌井 良幸(わくい よしゆき)
1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。現在は高校の数学教諭を務める傍ら、コンピュータを活用した教育法や統計学の研究を行なっている。
涌井 貞美(わくい さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程を修了後、 富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校の教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。

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「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」
(涌井良幸 涌井貞美/KADOKAWA)
家電からハイテク機器、乗り物、さらには家庭用品まで、私たちが日頃よく使っているモノの技術に関する素朴な疑問を、図解とともにわかりやすく解説している「雑学科学読本」です。

この記事は書籍「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」(KADOKAWA)からの抜粋です。
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