分子や原子の並び方でいうとガラスは液体!?/身のまわりのモノの技術(39)【連載】

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ガラス製造は日本の基幹産業の一つである。薄型テレビや自動車など、現代を代表する製品の重要な一部を担っている。しかし、その作り方や性質については意外と知られていない。

まず、家の窓に利用される普通のガラスの製法を調べてみよう。この場合、原料はケイ砂、石灰(炭酸カルシウム)、ソーダ灰(炭酸ナトリウム)だ。これらを混ぜ、1000度以上の高温で溶かし、冷やすとガラスになる。

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ケイ砂は砂状の石英、石灰はグラウンドに線を引くときに使う白い粉、ソーダ灰は調理で使用する膨らまし粉のカスである。ガラスは身近なものからできているのだ。

次に、ガラスの最大の性質である「透明性」について考えてみよう。石灰もソーダ灰も白色の不透明な粉末なのに、それらを溶かし、冷やして固めたものがどうして透明になるのだろう。

透明とは光が吸収されないことである。そこで、固いガラスの内部がどうなっているか、ミクロの視点で調べてみよう。すると、たいへん面白いことを発見する。分子や原子の並び方でいうと、ガラスはどちらかというと液体なのだ。液体は原子の並びが不規則なので光をさえぎるような境ができない。そのため光を通しやすい。水が典型的な例である。水が透明なのと同じ原理で、ガラスも透明なのである。

さて、見慣れたガラスではあるが、現在も日々進化している。先に挙げたテレビや自動車のガラス以外にも、光ファイバー、太陽電池パネルの保護膜、高エネルギーのレーザー発信材料など、さまざまなハイテク分野で活躍している。こうしたハイテクガラスは従来のガラスと区別するために、ニューガラスと呼ばれている。

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ガラスのように、外見は固い固体でも、構造的には液体のような物質をアモルファスと呼ぶ。近年では、鉄などの金属もガラスを真似てアモルファス化され、そこから生まれた不思議な性質が利用されている。例えば、太陽電池や変圧器などに応用されている。

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涌井 良幸(わくい よしゆき)
1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。現在は高校の数学教諭を務める傍ら、コンピュータを活用した教育法や統計学の研究を行なっている。
涌井 貞美(わくい さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程を修了後、 富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校の教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。

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「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」
(涌井良幸 涌井貞美/KADOKAWA)
家電からハイテク機器、乗り物、さらには家庭用品まで、私たちが日頃よく使っているモノの技術に関する素朴な疑問を、図解とともにわかりやすく解説している「雑学科学読本」です。

 
この記事は書籍「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」(KADOKAWA)からの抜粋です。

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