抗菌グッズが菌を繁殖させにくいのは金属のおかげ!?/身のまわりのモノの技術(27)【連載】

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若者を中心に抗菌グッズが人気だ。サニタリー用品、衣類、文具など、身のまわりのほとんどを抗菌グッズで揃えられるほど品数は豊富だが、本当に菌の繁殖を抑える力があるのだろうか。

抗菌に類する言葉に「殺菌」「滅菌」「除菌」がある。これらには菌を積極的に殺すという意味がある。一方、「抗菌」の意味は少し異なる。

経済産業省の「抗菌加工製品ガイドライン」によると、「抗菌加工した当該製品の表面における細菌の増殖を抑制すること」を「抗菌」と定義している。したがって、「抗菌」と表示されていても、殺菌や滅菌の効果は期待できない。「菌が繁殖しにくい」という効果を期待した製品なのである。

抗菌グッズは、抗菌作用のある物質を素材に練り込んだり、化学反応で結合させたりすることで製造されている。抗菌剤を用いる方法と金属を用いる方法が有名だ。抗菌剤は細菌の生命機能を乱したり破壊したりするもので、茶の成分のカテキンが有名である。

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金属を用いる方法では、銅や銀、チタンがよく利用される。細菌にこれらの金属を嫌う性質があるからだ。実際、10円玉から病気が感染したという話は聞かない。この性質を活かして、金属を直接に利用したり、その化合物やイオンを散りばめたりして抗菌作用を引き出すのである。

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先述したように、抗菌とは「菌が繁殖しにくい」ことである。しかし、さまざまな消費者センターがテストし、いくつかの製品は眉唾物であるという結果が得られている。そこで、業界が自主的な基準を作り、その基準に合致した抗菌作用を持つものにマークを付与している。繊維ではSEKマーク、繊維以外ではSIAAマークである。

最近では、一部の抗菌剤が有害であるという話も出ている。抗菌ブームは「不潔恐怖症」と呼ばれる現代人のヒステリーの現れともいわれる。あまり神経質になって抗菌グッズで身を固めると、かえって体によくない結果を及ぼすかもしれないので注意したい。

涌井 良幸(わくい よしゆき)
1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。現在は高校の数学教諭を務める傍ら、コンピュータを活用した教育法や統計学の研究を行なっている。
涌井 貞美(わくい さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程を修了後、 富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校の教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。

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「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」
(涌井良幸 涌井貞美/KADOKAWA)
家電からハイテク機器、乗り物、さらには家庭用品まで、私たちが日頃よく使っているモノの技術に関する素朴な疑問を、図解とともにわかりやすく解説している「雑学科学読本」です。

 
この記事は書籍「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」(KADOKAWA)からの抜粋です。

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