必要? 不必要? 放射線測定器/身のまわりのモノの技術(21)【連載】

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2011年の福島第一原子力発電所の事故(以下、原発事故)以来、放射線測定器の販売台数が急上昇している。情報の出し惜しみや誤情報の提示を繰り返す国や東京電力などに対する不信感が、こうした形で現れたのだろう。

原発事故で問題視される放射線は、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、中性子線の四つである。これらの放射線は我々の五感には感じられない。見ることも、感じることもできない。そこで、検出するには装置が必要になる。

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検出装置にはさまざまな種類がある。それらに共通する特徴は、放射線が大きなエネルギーを持つことを利用している点である。市販されている代表的なものを紹介しよう。

まずは、半導体検出器である。安価に売られている放射線測定器はこのタイプだ。半導体に飛び込んだ放射線が半導体原子に衝突して電子をたたき出す現象、すなわち固体の電離作用を利用する。この電子を電流として検知することで、放射線量を測定するのだ。

ガイガーカウンターは歴史的に最も有名な測定器で、気体の電離作用を利用する。放射線は装置内の気体の原子と衝突して電子をたたき出す。その電子を増幅することで、測定するのである。先に調べた「半導体検出器」と原理は似ている。

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最後に取り上げるのは、シンチレーションカウンターである。装置に飛び込んできた放射線が検出器内の原子と衝突し、それを励起する現象を利用する。励起された原子は光を放出して元に戻るが、この光を調べることで放射線を測定するのである。正確な測定に向いているカウンターだ。

放射線測定器を購入する上で理解しておきたいのは、こうした装置を使っても正しい測定は困難だということである。原子力発電所の事故現場ならばともかく、それ以外の地域の放射線量は小さい。そこに小さな検出装置を持ち込んでも、放射線量を正確に測定することはできない。個人で利用する際は、あくまで目安として利用すべきだ。

涌井 良幸(わくい よしゆき)
1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。現在は高校の数学教諭を務める傍ら、コンピュータを活用した教育法や統計学の研究を行なっている。
涌井 貞美(わくい さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程を修了後、 富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校の教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。

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「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」
(涌井良幸 涌井貞美/KADOKAWA)
家電からハイテク機器、乗り物、さらには家庭用品まで、私たちが日頃よく使っているモノの技術に関する素朴な疑問を、図解とともにわかりやすく解説している「雑学科学読本」です。

この記事は書籍「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」(KADOKAWA)からの抜粋です。

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