SNSに漫画を投稿し、たびたび話題を集めている「理系女ちゃん(@rikejo_chan)」さん。数ある作品のなかでも、人と人との"認識のズレ"をテーマにした作品を複数発表されています。新たに描き下ろした漫画『最高の息子の育て方』もその1つ。本作について著者「理系女ちゃん」さんにお話を伺いました。
教育熱心な優しい母親。でも息子にとっては...
物語の主人公は、息子・春樹を都内の進学塾に通わせる、いわゆる教育ママ。息子が"天才"であることを信じて疑わず、彼が幼い頃から教育熱心に育ててきました。そのおかげか、受験戦争を勝ち抜いた春樹は有名私立大学に合格。彼は主人公の誇りであり「最高の息子」なのです。
ただ、息子を大切に思うあまり、彼が恋人を作って家を出ていく日が来ることを考えると寂しさを覚えてしまう様子。「恋愛は本人の自由だから」と頭ではわかっていながらも、息子と釣り合わない「悪い虫」が現れることを警戒するのでした。
少し過保護な母親と、親の期待に応え立派に育った息子の物語。しかし春樹の視点からこの物語を読むと、まったく別のストーリーが見えてきます。
母は春樹に勉強をさせるため、友達を作ることもゲームで遊ぶことも許しませんでした。もちろん、恋愛などもってのほか。春樹視点から見た主人公は「勉強熱心な母親」というよりも、自分の理想を押し付けてくる「毒親」のように見えてきます。
実は美化されていた母親と息子の関係
──前半だけ読むと、少し過保護な母親と素直な息子という素敵な親子に見えました。まさか後半であんな展開になるとは...。我々読者は息子視点で描かれた後半を「事実」と受け取ってしまいがちですが、それで良いのでしょうか?
息子視点で描かれた後半は、もちろん息子の主観によるものです。そのため、完全な「事実」として受け取るかどうかは読者に委ねています。ただ、母親の視点では息子は「完璧な存在」ですが、それは美化された記憶でしかなく、息子自身は母親との関係に苦しんでいるのは事実なのだと思います。
──このテーマを描くにあたって、キャラ設定やセリフなどで気を付けた点はありますか?
母親の愛情が過度になると、どれほど抑圧的に感じるかを表現するため、母親が一見「良い親」に見えるように描きました。また、息子が冷静に母親の行動を受け止めつつも、内面では激しい葛藤を抱えていることをセリフで表現しました。このバランスを取ることで、読者に「表向きは完璧だが、実はそうではない」という不安感を与えたかったです。
息子視点で描かれた物語が「事実」なのか、それともこれも「事実」とは異なるのか? あなたはこの物語をどう読みますか?