著者・うみの韻花さんインタビュー
――「港区女子」をテーマに作品を描こうと思ったきっかけをお教えいただけますか?
うみのさん:もともと、私は「シリーズ立ち行かないわたしたち」を愛読していました。その編集者の方からX(旧Twitter)のDMで声をかけていただいたんです。「若さと市場価値」というテーマをいただいたとき、未知の存在である港区女子を題材にするのはおもしろいだろうと思い、お引き受けしました。

――本作を描くにあたって「港区女子」の方々に実際に取材されたそうですね。「港区女子」や「ギャラ飲み」について取材して、どんな印象を抱かれましたか?
うみのさん:「港区女子」の実態や「ギャラ飲み」のシステムについて全く知識がなかったので、とても興味深く、おもしろくお話を聞かせてもらいました。 港区女子と聞くと、高嶺の花で近寄りがたい、別世界の住人だと思っていたのですが、実際に取材した方々はとても話しやすく、親近感が湧きました。 その点では、少し拍子抜けしたほどです。
――「港区女子」の状況を知っていくなかで、作品へのインスピレーションを得た出来事や、実際に作品に反映させたエピソードがあれば教えてください。
うみのさん:取材中、元港区女子の方の一人が、「今でも金銭感覚が抜けず、高額な買い物をしてしまう。化粧品や美容液も数万円する高級品でないと使えない」と話してくれました。この話を聞いて、一度狂ってしまった金銭感覚を元に戻すのは難しいということを、作品に反映させようと思いました。

また、実際に作品に反映させたエピソードは他にもあります。
『プール付きのお店でギャラ飲みをしている時、水着になったら◯万円あげると言われた』
『芸能人の集まるギャラ飲みがあり、芸能人と繋がる目的で参加する子も中にはいた』
...など、作中で描かれている「ギャラ飲み」のエピソードは、そのほとんどが取材で聞いたお話を忠実に再現したものです。

――「ギャラ飲み」の実態や、港区女子たちを取り巻く富裕層の男性たちがリアルに描写されていますね。この世界を描く上で、特に意識されたことや気をつけたことは何ですか?
うみのさん:「ギャラ飲み」の実態については、経験者の方々にアプリのシステムや時給などを細かく聞き、作品に反映させました。 男性たちを描く上では、見た目は身なりが整っていても、目に光がなく冷たい印象を与えるように心がけました。これは、寂しさから「ギャラ飲み」を利用しているのだろうと予想したからです。

――作者であるうみのさんが、次第に浪費家になっていく主人公の美春に対して言葉をかけるとしたら、どのような言葉になるでしょうか?
うみのさん:「今は稼げていいかもしれないけれど、それは一生続けられるものなのかな? あなたが上京したのは、港区女子になって贅沢三昧したかったから? 家族とか、ずっとそばにいてくれた人たちのことを思い出して、目先の欲ばかりにとらわれないでほしいな。もしすべて失ってしまったら、その時どうするのか、よく考えてほしい」って言ってあげたいですね。
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若さと美しさという市場価値に翻弄されながらも、今を生き抜こうとする「港区女子」たち。その姿をリアルに描写した本作は、華やかな世界の裏にある影と、そこに生きる女性たちの葛藤を映し出しています。
取材・文=山上由利子




