ネットで話題の作品『赤ちゃんに転生した話』の書籍が2023年2月14日に発売されました。本作では、ブラック企業で過労死した主人公が、大人の心を持ったまま赤ちゃんへと転生するも、想像以上に赤ちゃんには制限が多く、大変なことを実感していきます。こちらの作品は現役の小児科医が監修。赤ちゃん特有のしぐさや行動がリアルに描かれるとともに、その理由をわかりやすく解説しています。
今回は、監修者であるDr.しばさんにインタビュー。作品にたずさわった想いはもちろん、子育て中のママやパパに役立つ情報も教えていただきました。
■読むと赤ちゃんの気持ちが分かる、画期的な作品
以前からTwitterで『赤ちゃんに転生した話』を読んでいたというDr.しばさん。
作者の茶々京色さんから監修の依頼をされたときの気持ちを伺うと、「感激でした。微力でも、素敵な作品の制作に関われることが嬉しかったです。私は普段から子どもの事故防止について医学情報を発信しており、それが子育て中の茶々京色さんの目に留まっていたというのも大変光栄でした」と教えてくれました。
医師の立場から見た『赤ちゃんに転生した話』の率直な感想は、とにかく画期的な作品だということ。
「言葉をしゃべらない赤ちゃんを相手にしているので、育児には不安がつきものではないでしょうか。本作は、現実の世界では知り得ない"赤ちゃんの目線"で作られています。つまり、読むと赤ちゃんの気持ちを知ることができ、読者が抱いている育児への不安を減らしてくれる構成になっています。これが大変画期的だと感じています。特に、はじめての育児で不安が多い親御さんに見ていただきたいと思います」
■小児科医は、子育て中のママやパパの味方
数々のエピソードの中でも、特に印象に残っている回は、主人公の赤ちゃんが初めて発熱した回とのこと。
「たとえ親御さんの知識が豊富であっても、我が子が初めて発熱した際には頭が真っ白になり、取り乱してしまうものだと思います。小児医療に携わっている私達は、そういった親御さん達の不安にも寄り添った医療を提供しなければならないと、あらためて思い知りました。本作から学べることはたくさんあります」
実際、突然の赤ちゃんの発熱や体調不良は、すぐに病院に行くべきかどうか判断が難しい場合もあります。
そういったときは、どうしたらよいのでしょう?
「本編でも紹介されていますが、休日や夜間にお子さんが発熱して、医療機関へ受診すべきかどうか判断に迷う場合は、子ども医療電話相談事業『#8000』へ相談していただきたいです。応急処置の方法や受診が必要な目安などを、小児の医療相談に経験豊富な看護師、医師が対応します。日中の診療時間内で、受診しようか迷った場合は、その時点でかかりつけ医を受診しましょう。小児科医は子どもと親御さんの味方です」
■成長に合わせて環境を見直すことが大切
本作では1歳までの赤ちゃんの成長過程を描いています。
そこで、実際にいま子育て中のママやパパに向けて、自宅の中で気を付けるべきことを聞いてみました。
「生後1歳未満の赤ちゃんは、月齢によってできるようになることが大きく違います。そのため、親御さんにはお子さんの運動機能の発達に合わせて、家庭での環境整備をしていただきたいです。例えば、寝返りをうまくできない月齢では、就寝時の窒息事故を防ぐため柔らかい寝具を使うことを避ける、つかまり立ちができるようになったら、"子どもの手の届く範囲"を見直すなどです」
月齢に合わせた環境を整備することで、思いがけない事故を防ぐことができそうです。
最後に、1歳未満児の子育てに頑張る皆さんに、Dr.しばさんからメッセージをいただきました。
「とても弱々しくて、しゃべらない赤ちゃんを育てるのはとても大変で、インターネットや周囲の人から入ってくるさまざまな情報に振り回されて疲れている親御さんはたくさんいると思います。そんな親御さんの不安を少しでも和らげるのも小児科医の役割の一つだと思っています。不安なことがあれば、気軽にかかりつけの小児科へ相談にいきましょう」
取材・文/寳田真由美(オフィス・エム)