世界中にファンを持ち、2016年にはミュージシャンとして初めてノーベル賞を受賞したボブ・ディラン。この夏、来日することが決定し、話題となっています。70歳を越えて今なおメッセージを伝え続ける続ける彼の功績を追ってみました。
2018年5月24日、77歳の喜寿を迎えたボブ・ディラン。1960年代はアメリカでビートルズと人気を分け合い、若者文化を象徴する存在でした。これまでに世界最高峰の音楽賞「グラミー賞」は11冠! 映画の主題歌を担当すればアカデミー賞を受賞し、はたまたアメリカやフランスの文化勲章、ピューリッツァー賞(米・コロンビア大学が主催。ジャーナリズムなどを表彰する賞)など、ありとあらゆる賞を獲得してきた中、2016年10月にはミュージシャンとして初めてノーベル文学賞を受賞しました。
そして、この夏、受賞後初の来日が決定。その舞台は、日本最大級の野外音楽祭「フジロックフェスティバル'18」(昨年は12万5千人を動員)。同フェスの最後を飾るということで、日本中が大いに沸いています。
1970年代、CBS・ソニーレコードでボブ・ディランを担当し、日本で初めて大々的なキャンペーンを実施して以来、日本におけるボブ・ディラン研究の第一人者である菅野ヘッケル氏(70歳)はこう言います。
「アメリカの音楽の歴史の中で新たな詩的表現を生み出したってことが受賞の理由だったけど、ボブはロックスターの印象が強いから、ノーベル文学賞をとったことは、世界中が驚いたよね。でも、もともと詩人でもあるし、本来"吟遊詩人"といって歌で詩を伝えることも"本流"。1997年から毎年ボブを推薦する人もいたし、気運は高まっていたんですよね」。受賞発表後、一時期事務局が本人と連絡がとれなくなり、そのマイペースなキャラクターにも注目が集まりました。
「本人は、内心すごくうれしいと思っているはずだけど、素直じゃないからね(笑)。受賞発表2日後に出演したフェスでも、ノーベル賞のことは一切言わなかったし、そこで友人たちに「おめでとう」と言われても、「おお、そうか」ってそっけなかったみたい(笑)。ただ、ボブだったからこそ、ノーベル賞自体がいつになく大きな話題になったよね」。
彼の表現は、詩や音楽にとどまらず、絵や彫刻など多岐にわたりますが、受賞後、大学などでもボブ・ディランをテーマにした授業が増えているそうです。
ボブ・ディランは、1988年から30年間、毎年100回近いライブを世界各国で行い続けています。いまでは、ほとんど人と会わず、来日時もレコード会社の担当者ですら会うことはない。その姿を確認できるのはステージ上だけだそう。
「ライブは彼の生き様ですよね。病気でステージをキャンセルしたなんて、1997年の数カ所くらいで、それ以来ない。自分のやりたいことをそのままステージでやって、それがどう伝わるかを確かめて、楽しんでるの。それを何十年も続けてる。ライブ中、客席に語りかけたりしないし、『ありがとう』なんてこびたりもしないけど、彼がいまやりたいこと、元気かどうかっていうことは、ステージを見れば分かるんです」。
1978年に日本武道館で行われたボブ・ディランの日本公演を収録したライブアルバム『武道館』はヘッケル氏が制作。本国以外が主導権をとった公式作品は他になく、実現したのは「ボブが日本を好きだからこそ」といいます。そして、今回の来日を記念して発表される『ライヴ:1962-1966~追憶のレア・パフォーマンス』も、ボブが日本のファンのために許可したのだそう。同作は、1960年代初頭のレア音源が収録され、代表曲「風に吹かれて」については、1962年4月16日、コーヒーショッで2時間ほどで書き上げ、すぐにライブでやりたいと、その日にライブハウスで歌った音源もあるとか。
2018年7月29日のフジロック出演は、日本通算101回目の公演。
「大事件ですよ。誰も日本のフェスに出るなんて思っていなかったからね。主催する株式会社SMASHの社長日高(正博)さん(69歳)は1998年の立ち上げ当初からボブを呼ぼうと出演依頼し続けて、ついに夢がかなったとは聞いたけど、そういう熱意は本人にも伝わるからね。伝説の一夜になるだろうね。自分のコンサートで最近は歌っていない『ライク・ア・ローリング・ストーン』や『風に吹かれて』もフェスではやるかもしれないし、ホントに何が起きるか分からないからね」。
この夏、新たなボブ・ディラン伝説が生まれそうです!
取材・文/古城久美子
ボブ・ディラン Bob Dylan
1941年、アメリカ・ミネソタ州生まれ。1962年にアルバム『ボブ・ディラン』でデビュー。翌年、時代を超えて歌い継がれる「風に吹かれて」を発表。アルバムのトータルセールスは全世界で1億2500万枚を超える。グラミー賞、アカデミー賞他、数多くの賞を受賞。
「FUJI ROCK FESTIVAL'18」
日本最大級の野外音楽フェスティバル。3日間で200組以上の洋楽&邦楽アーティストが出演する。ボブ・ディランは7月29日(日)に出演。ほかに、ミュージシャンではボブ・ディラン以来、ピューリッツァー賞を受賞したケンドリック・ラマーが7月28日(土)に出演するほか、サカナクション、ユニコーンらがステージを飾る。
日時:7月27日(金)、28日(土)、29日(日)
場所:新潟県湯沢町苗場スキー場N.E.R.D
©宇宙大使☆スター
来日記念CD
『ライヴ:1962-1966~追憶のレア・パフォーマンス』
7月18日(水)発売、2,800円+税、ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
完全生産限定/アナログ盤 『追憶のハイウェイ61』
(1965年作品)
7月18日(水)発売、3,800円+税、ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル