暮らしの中の香りを大切にしているという女優・中田喜子さん。30年も前からお香を楽しんでいるそうです。
お香を楽しむようになったきっかけは、意外にも当時飼っていた愛犬だったそうです。どんなことがあったのでしょう?
愛犬のトイレの臭いも気にならなくなりました
「わが家には犬が4頭いたんです。そのうちの1頭がとてもきれい好きでね(笑)。私が犬用のトイレシートを2階の廊下に敷いておいても、一度汚れたシートに乗るのを嫌がって、お尻を外に出しておしっこをしてしまうの。床がぬれて、臭いも気になってしまって...」
当時は、仕事から帰ってくると何よりも先に、びしょびしょにぬれた床を掃除するのが日課でしたが、部屋の香りのことをあれこれ調べるうちに、たどり着いたのがお香。伽羅(きゃら)のお香をたいてみたところ、これが大正解だったというわけです。
「ペットを飼っている方に、なぜお香をたいているのかと聞かれたときには、いつもこのお話をするんですよ。実際に使ってみて、好きな香りが気持ちを豊かにしてくれることも知りました。それからは、お香の店にも足を運ぶようになり、好きな香りを見つけては空薫(からだき・部屋に香りを漂わせること)をしています」
香りを楽しむ文化の始まりは、そもそも古代エジプトやメソポタミア文明の時代から。日本には仏教伝来のころ、奈良時代に伝わったといわれています。室町時代には天然香木の香りを鑑賞する「香道」という独自の芸道も発展しました。長い歴史を経て、やり方こそ変わっても、いま、こんなふうに気軽に楽しめるなんてすてきなことですね。
「疲れを癒やしたいときや気分転換したいときの、私の心強い味方です」
中田さんが愛用する香り
花の香りや伽羅など天然香木の香りなど、気分に合わせて香りを選ぶという中田さん。形もスティック状やコーン状などを使い分けています。
手紙を開けたときの相手の喜ぶ顔を想像しながら、封筒の中にこんな文香(ふみこう)を忍ばせて送ることも。
たんすの片隅にそっと入れて、大切なきものを保管します。ほのかな移り香を楽しめるのもいいところです。
匂い袋は、衣服に芳香を写すだけでなく、外出時に携帯できて便利です。
取材・文/飯田充代 撮影/齋藤ジン
中田喜子(なかだ・よしこ)さん
女優。18歳でデビュー。20年以上続いたTBSドラマ『渡る世間は鬼ばかり』では三女・文子を好演。他にも出演ドラマは100本を超える。