いま、非燃焼・加熱式タバコや電子タバコといった「新型タバコ」の人気が急上昇しています。しかし、日本呼吸器学会は今年10月に公式ホームページ上にて、「健康に悪影響がもたらされる可能性があるため、使用は推奨できない」とする見解を発表しました。吸う人と吸わない人、どちらも気になる最新のタバコ事情をお伝えします。
なぜ、新型タバコの人気が出てしまうのか
新型タバコと聞くと、これまでの紙巻タバコに比べて健康へのリスクが少ないという印象があります。そのため、受動喫煙や呼吸器官を痛める心配がないと考えている人も多いのではないでしょうか? しかし、科学的な根拠は現時点でははっきりしておらず、推測でしかないようです。
これらの新型タバコは、「煙が出ない(または見えにくい)ために、禁煙エリアでも吸える」「受動喫煙の危険がない」「従来の紙巻たばこより健康リスクが少ないので、どうしてもやめられない人の代替品になる」などと誤認されていることも、普及の要因になっているようです。
非燃焼・加熱式タバコは、葉タバコをバッテリーで電気的に加熱することでニコチンを含んだ蒸気を発生させ、それをパイプで吸引する仕組みです。そして電子タバコは、ニコチンを含んだ液体、または含まない液体を加熱して蒸気を発生させて、パイプで吸引します。
電子タバコは、日本だとニコチンを含むタイプは、医薬品医療機器法(旧薬事法)の対象になるため、販売できないことになっています。しかし、通販を使えば海外から入手可能なので、それでニコチン入りの電子タバコを吸っている人もいるようです。
新型タバコは何が問題なの?
ここからは、新型タバコの問題点を見ていきましょう。まず、健康へのリスクですが、非燃焼・加熱式タバコには、燃焼式タバコとほぼ同レベルのニコチンやアクロレイン、ホルムアルデヒド、約 3 倍のアセナフテン等の有害物質が含まれていることが報告されています 。
また、ニコチン入り電子タバコの使用者から検出されるニコチン代謝物も、燃焼式タバコ使用者を基準(100%)とした場合、ほぼ同等量(80 - 200%)が検出されるとのことです。
しかし、電子タバコの特異的ニトロソアミンの尿中代謝物は、燃焼式タバコ使用者の 1.5 - 4.2%、揮発性有害物質の代謝物は 20 - 60%程度と少ないとする報告があります それでも、体内に有害物質が取り込まれているのは明らかなようです。
新型タバコの使用者が吐き出した蒸気は周囲に拡散するため、受動吸引による健康被害が生じる可能性もあります。従来の燃焼式タバコと同様に、すべての飲食店やバーを含む公共の場所、公共交通機関での使用は認められていません。
喫煙率は減少中だが、まだまだ多い
JT全国喫煙者率調査の「2017年全国たばこ喫煙者率調査」によると、成人男性の平均喫煙率は28.2%でした。昭和41年のピーク時よりも減少し続けていますが、海外と比べると未だに高い状況にあり、約1400万人が喫煙していると推定されています。
また、成人女性の平均喫煙率は9.0%であり、昭和41年のピーク時よりも次第に減ってきていますが、ほぼ横ばいの状況です。
上がり続けるタバコの税金
政府は2018年度の税制改正を検討していて、2018年10月から4年かけて、たばこ税を1本当たり3円程度引き上げる案の調整に入りました。
とうとうタバコ一箱が500円台になるようです。とはいえ、他の国々から見ればまだまだ安いほうだというのはご存知ですか? 諸外国には、一箱1000円を超えているところもあるのです。
世界で広がる禁煙
国際機関によって定められた記念日である「国際デー」というものをご存知でしょうか? 毎年5月31日は「世界禁煙デー」で、禁煙を推進するために世界保健機関 が記念日として制定しました。なお、日本では1992年(平成4年)より、5月31日から6月6日までの1週間が禁煙週間となっています。
新型タバコも完全に無害ではないとわかり、増税も検討されているようです。吸える場所も制限され、さらに税金も引き上げられたりと、喫煙者にとっては辛い状況が続きますが、吸う人も吸わない人もルールを守って、気持ちよく過ごせるといいですね。
とくに「新型タバコは無害!」「禁煙のお店でもOK!」と思い込んでいた人は、正しい知識を身に着けてタバコを嗜むようにしてください。
文/今野菜美