あなたの身体のお悩みに医療法人社団同友会理事長 高谷典秀先生が答える「なんでも健康相談」。今回は「お尻にできた腫れもの」のお悩みに答えます。
Q
最初はニキビかと思いましたがだんだんと腫れあがり...
64歳の男性です。数週間前、入浴中に、お尻の肛門の横のあたりにニキビのようなものができているのに気が付きました。
ニキビは珍しくないのでそのまま放置していたのですが、時間が経つにつれて大きくなり、椅子に座るのも、仰向けに寝るのも辛いほど痛くなってきました。鏡で見たところ、お尻の片側、3分の1くらいが赤く腫れあがっています。
このまま様子を見ていれば、やがて腫れは引くのでしょうか。それともニキビではなく、何か別の病気に感染をしているのでしょうか。
A
肛門の内側が膿んでいる可能性が。放置すると「痔ろう」に
今回はお尻の近くに腫れができたという方からのご質問ですが、症状から察するに、肛門周囲膿瘍と呼ばれる状況かと思います。
肛門周囲膿瘍という病気は、肛門の出口よりも少し内側の所から内部へばい菌が進入してしまうものです。やがてばい菌が繁殖して、膿がたまってしまい、あなたのように腫れあがってしまうのです。
時間が経つにつれ、どんどん大きくなり、痛みもひどくなりますので、早めに切開をして膿を出してやり、患部を綺麗にし、抗生物質を用いてばい菌を殺してあげる必要があります。
治療をせずに放置していますと、やがて腫れている部分がお尻の外側に向かって自壊し、膿が外へと流れ出します。これが痔ろうと呼ばれる状況で、肛門とは別に、直腸とお尻の外側を繋ぐ「ろう管」という通り道が出来てしまうのです。こうなりますと、ろう管を取り除く手術が必要となってしまいます。
痔ろうを繰り返していると、ろう管が複数、かつ複雑に形成されてしまい、複雑痔ろうと呼ばれる状態に進展し、手術もより困難なものとなります。さらには、10年~15年など、長期間痔ろうを繰り返していると、稀ではありますが、がんの原因にもなるのです。
痔と聞きますと、よくイボ痔や切痔などを連想いたします。イボ痔は肛門の内外にイボが出来てしまう病気で、切痔は肛門周辺が裂けてしまう病気です。ですが、痔ろうというものは、これらの一般的な痔とは一線を画するもので、専門の医師によるきちんとした治療が必要となります。まずは肛門外科、消化器外科等を受診していただき、専門の医師による診断、治療を受けることが大切です。最近では様々な新しい治療法があり、入院をせずに外来でも治療を受けられる施設もあるようですので、どうぞ早めにご受診ください。(老友新聞社)
高谷 典秀 先生(たかや・のりひで)
医療法人社団同友会 理事長。順天堂大学循環器内科非常勤講師。日本人間ドック健診協会 理事。学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授。
著書に『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』(株式会社法研)など。