健康であるためにはどうしたらいいのか? セルフメディケーションの時代と言われる今、私たちもそれなりの健康常識は身につけておく必要があります。
病気というものをどうとらえるか、医者との付き合い方、 病気にならない考え方――。ほかにも、食事の摂り方、ストレスの対処の仕方、あるいはダイエットを成功させるコツな ど、明るく元気に毎日を過ごしてもらえる有益な情報を連載でお届けします。今の生活をもう一度見直し、自己治癒力を高めるスキルを学びませんか?
生活習慣や考え方に原因があれば薬だけでは防げない
高血圧の例を挙げましょう。
典型的な猛烈商社マンである30代の男性は、会社の定期健診で高血圧と指摘され、降圧剤の服用を勧められました。しかも、産業医(会社専属のかかりつけ医)からは、「ずっと血圧の薬をのまないといけません」と釘を刺され、不安になって僕のところに相談に見えました。エリートである彼のストレス負荷は、相当なものだろうと想像できました。
アドバイスしたのは、「薬で血圧を下げるのは根本的な治療ではなく、あくまでも対症療法であること」「薬の服用は限られた期間に限定し、その間に生活習慣を是正し、減量や、ストレス負荷を和らげるなどの努力を優先して行なうこと」でした。
出世も大切かもしれませんが、1カ月の残業時間がゆうに100時間を超える現状ならば、配置転換や職を変わることも視野に入れたほうが身のためだと判断したのです。
しかし3カ月後、彼は海外出張の途中、脳出血で倒れました。幸い一命は取りとめられ、半身麻痺を克服するために目下リハビリに専念中だとのことでした。
病状が落ち着いてから彼に会い、話を聞いてみると、生活習慣は改められなかったものの、降圧剤だけは欠かさなかったそうです。会社は復帰を待つと言ってくれましたが、会社人間はやめ、リハビリをしながら自分の生き方を考えたいとのことでした。
血圧の値は入院後に低くなり、結局薬はのまなくてもよくなったそうですが、それもそのはず、彼の血圧が下がったのは、考え方を変え、生活習慣を是正したための結果であり、ごく自然な成り行きなのです。
血圧が低くても脳出血は起きますし、血圧が非常に高くても脳出血が起こらないこともあります。僕自身、脳外科専門医として数多くの脳出血事例を診てきましたが、極端な高血圧は別として、血圧の値と脳出血が直接相関しているという印象はありません。むしろ血圧の値の急激な変動、生活習慣の乱れ、栄養の偏り、肥満、考え方、過度なストレス負荷などのほうが、脳出血とより密接に相関しているのではないかと考えています。
岡本 裕先生(おかもと・ゆたか)
1957年大阪生まれ。e-クリニック医師。大阪大学医学部、同大学院卒業。卒業後12年あまり、大学病院、市中病院、大阪大学細胞工学センターにて、主として悪性腫瘍(がん)の臨床、研究にいそしむ。著書に『9割の病気は自分で治せる』『9割の病気は自分で治せる2【病院とのつき合い方編】』『9割の病気は自分で治せる【ストレスとのつき合い方編】』(以上、KADOKAWA)、『22世紀。病院がなくなる日』(飛鳥新社)など多数。
「カラー版 図解 9割の病気は自分で治せる」
(岡本 裕/KADOKAWA)
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