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健康であるためにはどうしたらいいのか? セルフメディケーションの時代と言われる今、私たちもそれなりの健康常識は身につけておく必要があります。
病気というものをどうとらえるか、医者との付き合い方、 病気にならない考え方――。ほかにも、食事の摂り方、ストレスの対処の仕方、あるいはダイエットを成功させるコツな ど、明るく元気に毎日を過ごしてもらえる有益な情報を連載でお届けします。今の生活をもう一度見直し、自己治癒力を高めるスキルを学びませんか?
噛まないで食べると、食べ過ぎや胃腸の負担に
僕が病院勤務をしていたときは、朝7時に出勤、8時半には手術室にいるという生活でした。当然、ゆっくりと食事を摂る時間はなく、手術が続けば、手術の合間に食べ物をつまむことしかできませんでした。
入院患者をたくさん抱えた総合病院の仕事は、胃腸が丈夫で、食べ物にこだわりがなく、何よりも早飯食いでなければ務まりません。若かったからこそ乗り切れましたが、あの生活が今日まで続いていたら、たぶん今ごろは、僕も体をこわしていたでしょう。ストレスをためこんでいた上に、早食いなのですから、体によいわけがありません。
しかし、日本の食卓から米中心のメニューが減り、パンや麺類の割合が増えるにつれ、僕たちが口にするものはどんどん軟らかくなり、十分に噛まなくても飲みこめる食べ物が増えてきました。その典型が子どものおやつです。プリンやケーキ、アイスクリームなど、どれを取っても、数回噛むだけで喉を通過するものばかりです。
噛むことは、単に食べ物を噛み砕くだけが目的ではありません。食べ物を噛むためにあごを動かすと、唾液腺から唾液が分泌されます。その唾液中にはアミラーゼ、ヨウ素、フッ素、ムチン、ペルオキシダーゼなどさまざまな物質が含まれ、食べ物の栄養成分が胃や腸からしっかりと吸収されるように作用します。
噛む回数が多いほど胃の負担も軽減できますし、満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを防いでダイエット効果もあります。また、よく噛むほど脳の血流量が増加し、大人も子どもも頭が冴えるようになります。
しかし、早食いは食べ過ぎの原因となって肥満を引き起こし、肥満は、糖尿病や動脈硬化などのリスクを高め、命の短縮にも拍車がかかるのです。
早食いだけでも体内には大量の活性酸素が発生しますが、食べ過ぎると、活性酸素の発生にはさらに拍車がかかります。
たかが早食い、されど早食いです。もしも早食いなら、意識してゆっくりと食事するよう心がけてください。
岡本 裕先生(おかもと・ゆたか)
1957年大阪生まれ。e-クリニック医師。大阪大学医学部、同大学院卒業。卒業後12年あまり、大学病院、市中病院、大阪大学細胞工学センターにて、主として悪性腫瘍(がん)の臨床、研究にいそしむ。著書に『9割の病気は自分で治せる』『9割の病気は自分で治せる2【病院とのつき合い方編】』『9割の病気は自分で治せる【ストレスとのつき合い方編】』(以上、KADOKAWA)、『22世紀。病院がなくなる日』(飛鳥新社)など多数。
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(岡本 裕/KADOKAWA)
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