あなたの知らない「相続」の世界/法律のプロと相続を考える

pixta_27419508_S.jpgみなさんは「相続」と聞くと、何をイメージされるでしょうか。

・相続って、難しい法律の問題なんじゃないの?
・相続って、税金の問題でしょ?
・相続って、一部のお金持ちが心配することでしょ?

このようなイメージを持たれているのではないでしょうか。

実は、法律のこと、税金のことでも、一部のお金持ちが心配することでもありません。相続とは「人間の思い込みと感情」がぶつかり合う場です。

そんな相続の現場で起きていること、考えなければならないことを、相続、遺言、家族信託支援を専門にする司法書士・青木郷が、実際に事務所で経験した事例も交えながら、全13回にわたって解説していきます。

第1回目の今回は、「相続」の世界のご紹介と、「修羅場」を回避するために必要なことをご紹介します。

優しかった人が別人に変わってしまう相続

多くの相続の現場を見てきて思うのは、相続という現象には不思議な力があるということです。それは、時にとても大きなマイナスの力となって相続人や周囲の人たちの心を蝕み、別人に変えてしまうことがあります。

母親が生きている間は、家族を含め周囲の人たちからの評判も良く、常に両親や弟妹を気遣い、家庭でも妻を想い、子どもにとっても良き父親であった長男。そんな長男が、母親が亡くなり、相続が始まった途端に豹変します。

母親の名義だった自宅を相続したいがゆえに、まだそこに住んでいる父親を追い出す算段を整え、遺産分割協議の場で反対する弟や妹を激しく罵倒し、挙句の果てに妹の首を締め上げる。まるで何かが憑りついているとしか思えないような長男の姿に、恐怖を感じました。

家族の絆がより強くなる相続

pixta_31963057_S.jpgその一方で、暖かく包まれるようなプラスの力となって、たくさんの人の心に灯りつづけることもあります。

生きている間は、厳格で無口だった父親が亡くなった時、母親が最後の家族旅行の時に渡されたという父親からの手紙。それは全ての子どもとその配偶者たち、孫、友人たち、そして妻に対する感謝の気持ちをつづった遺言書でした。それぞれにたくさんの思い出があったこと、楽しいこともつらいことも一緒に共有してきたことが、びっしりと書かれていました。

遺された家族全員、「無口で厳しかった父は、心の中でこんなにはしゃいだり、悲しんだりしていたんだね。私たちと同じ思いを持っていたんだね」と泣きながら笑いあいました。当然、そのような家族で父親の相続財産の分配をめぐって争うわけもなく、遺言書のとおり手続きは終わり、父親の死後、さらに家族間の結束は強くなりました。

【相続の修羅場】を回避するために必要なこと

誰かが亡くなることで、各相続人がお互いを罵り合う修羅場と化す相続になるのか、みんなで泣き笑いしあう暖かい、良い相続になるのか。それは、亡くなった人がどんなふうに自分の家族と向き合い、時間を積み重ねてきたのかにかかっています。こうした「人間の思い込みと感情」のぶつかり合いの後、ようやく法律と税金の話題となるわけです。

pixta_17253615_S.jpgまず、相続は法律でも税務でもなく、「人の感情」が問題の大部分を占めていることを認識しましょう。まだ、両親が生きているのであれば、ここからいくらでも「暖かい、良い相続」に向けて時間を積み重ねられます。

法律や税金の情報を収集する前に、まずは久しく会っていない両親のもとへ「久しぶりにおふくろの飯が食べたくて」とふらりと帰ってみましょう。そして、色々な話をするところから始めてみましょう。それが、「相続による修羅場」を防ぐ、第一歩となるはずです。

プロフィール写真.jpg青木郷(あおき・ごう)

司法書士・行政書士・家族信託専門士・家族信託コーディネーター。開業当初より、相続、遺言、家族信託に特化した業務展開を行ってきており家族信託組成支援を含む相続・承継の支援を行った家族は300世帯を超える。複雑で難解な相続手続きを明快に整理したうえで支援、またそのご家族に合った相続・承継対策を一緒に作り上げている。遺言書作成や家族信託組成支援については、お客様の希望や想いを丁寧にヒアリングしたうえで、税理士、不動産コンサルタント等と連携して支援を行っている。共著に『ファイナンシャルプランナーのための相続⼊⾨』(近代セールス社)、執筆・監修に『わかさ11⽉号 保存版別冊付録【⽼い⽀度⼿帳】』(わかさ出版)がある。

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