「特別養護老人ホーム(特養)の「ベッド買い」が自治体によって行われている――朝日新聞が1月12日の朝刊で報じた「ベッド買い」とは、自治体が、他の自治体にある特養を運営する社会福祉法人と協定を結び、補助金を支払って自らの自治体住民が優先的に特養へ入所できる枠を確保するというもの。
「住んでいる地域や所得などにかかわらず、平等に福祉サービスが受けられるという介護保険制度の趣旨に反する」という記事に対し、加藤厚労相は「実態を把握する調査を始めた」と会見で語った。
ベッド買いをめぐっては過去に違法判決が出ている。しかし都市部は地価も高く土地取得費用が高額で遊休地も少なく、施設建設が計画通りに進まない現状がある。こうした仕組みは介護保険制度が始まる前から行われてきたといわれている。
特養老人ホームは、全国に9500カ所あり、入居対象者は要介護認定を受けていることが条件。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)など他の介護施設に比べ利用料金が比較的安いのが特徴で、認知症などが進行した場合でも退所する不安がないため入所希望者は多く、以前は入所待機者が52万人以上もいた。
しかし、2015年4月に厚労省が「重度者優先」の方針を打ち出し、入所申し込み条件を「要介護3以上」と厳しくした。そのため、入所待機者は36万6139人(2016年4月現在)と3割も減った。
政府は、こうした施設介護から在宅介護を中心とした「地域包括ケア」へ転換し推進していく方針。しかし、在宅介護を支える介護人材の不足は深刻だ。仕事の内容の割に賃金が低く、離職率が高い。需要を満たす介護サービスの供給が追いつかず、家族で担わねばならない部分が増えるだろうと指摘されている。
2025年には65歳以上の人口は3657万人となり、総人口に対する割合は30%を超える。独居者が増え、老老介護問題も深刻さを増すだろう。
介護する側も介護される人たちも抱える問題は様々。現実に対応するには多様な選択肢が必要だと思われる。(日本老友新聞)