2歳半で映画デビューして以来、女優として活躍してきた中村メイコさん。23歳で音楽家・神津善行さんと結婚し、70歳を過ぎた今、老後の二人暮らしを目いっぱい楽しんでいます。「終活」を意識する年代の老夫婦が毎日を明るく過ごす、その秘訣をユーモアたっぷりに教えてくれるのがこの本「夫の終(しま)い方、妻の終(しま)い方」です。
「いい奥さん」を続ける必要はありません
どんな人でも70歳を過ぎれば体力が衰えてきますので、「いい奥さんからも降りてしまいましょう」とメイコさんは提案します。若い頃と同じように家事をこなそうとしても、なかなかうまくいきません。無理して疲労やストレスをため込んでしまえば不機嫌にもなり、本人にとっても家族にとってもマイナスに。
「いい奥さん」をやめてしまい、家事にはメリハリをつけ、疲れているときには弱音を吐いてもかまわないのだといいます。ただし、家の中が暗くならないように、「くたびれちゃった。もう出ガラシだあ~」と明るい調子で弱音を吐くようにしましょう、と前向きに暮らすヒントも教えてくれます。
歳とともに悩みが増える「健康」についても、その姿勢は変わりません。関節の痛みは、長年生きてきた「シニアの勲章」だと考え、五十肩も「ああ、老いが順調にやってきているのね」と受け流します。「そう考えれば、深刻にならずにすみます。深刻になったからって治るわけではないし」。気持ちがすっと軽くなる考え方ですね。
「老い」による失敗を面白がる
メイコさんのポジティブな感性は、日常のあらゆることを苦労から解き放ち、別の風景に変えていきます。夫のことを「危険がひそむ、耄碌(もうろく)という戦場で、安全確保のためにともに戦う老兵」といってみたり、自宅の二階を「二階山」と呼んで、階段の上り下りの大変さを登山にたとえてみたり。
メイコさんは人生目標を、冗談まじりに次のように語ります。
私の残り少ない人生の目標は、自分の特技を生かして、神津サンを一日に三回笑わせることです。
生まれ持った性格だけでなく、いつも夫を笑わせようとする努力がプラス思考につながっているのでしょう。歳を取ったことでやってしまう失敗やうっかりミスも、落ち込んだりせずに面白がることができるのも、こういった考えのおかげなのかも知れません。
ところで、ある日冷凍庫を開けたら、メガネが入っていました。ステキな冷凍メガネ、スッゴク冷たかったです。多分、シールに日付を書いたときに使って、入れっぱなしにしてしまったのでしょう。年をとると、いろんなことがありますね。
つい声に出して笑ってしまうようなエピソードと、まねしたくなるヒントが満載。こんなに楽しいなら老後の二人暮らしも悪くないかも、という気持ちにしてくれる、おすすめの一冊です。
文=今井康宏
(中村メイコ / PHP研究所)
夫婦二人きりの老後がなぜか気まずい――。それは「夫」と「妻」、それぞれの役割が窮屈になっているからでは? ギクシャクしていたお二人様の老後を、楽しい老後に変えることができたメイコさんが、自らの経験から得たヒントを教えます。