「病気の名前は、肺がんです」。医師からの突然の告知。しかも一番深刻なステージ4で、抗がん剤治療をしても1年生存率は約30%だった...。2016年9月、50歳でがんの告知を受けた刀根 健さん。残酷な現実を突きつけられても「絶対に生き残る」と決意し、あらゆる治療法を試して必死で生きようとする姿に...感動と賛否が巻き起こった話題の著書『僕は、死なない。』(SBクリエイティブ)より抜粋。過去の掲載で大きな反響があった連載の続編を、今回特別に再掲載します。
※本記事は刀根 健著の書籍『僕は、死なない。』から一部抜粋・編集しました。
※この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。
『僕は、死なない。』出版、それから...
2019年12月18日、僕の本の出版日となった。
両親や姉、お世話になった人たちへ差し上げようと思って予約をしていた本が10冊ほど自宅に届いた。
単行本としてはページ数が若干多めのその本を手に取って、眺めてみる。
ああ、本当に本になったんだな...。
ずっしりとした本の重みが、なんとも言えない実感を伝えてきた。
この本を手に取ってくれる人がいるんだろうか?
読んでくれる人がいるんだろうか?
まったく、分からなかった。
でも、一人でもこの本を読んでくれる人がいて、一人でも僕の体験から何かを感じてくれる人がいたら、それでもう十分この本が世に出た意味があるんじゃないだろうか。
まあ、ちょっとは売れなければ吉尾さんは困るかもしれないけれど。
「本を買いました」
友人や知人たちから早速連絡が入り始めた。
この本は自分の体験談だから、僕のことが丸裸になったようで少し恥ずかしかったけれど、嬉しかった。
年末、新聞に広告を載せてもらった。
それは少し大きな広告枠で、従来だとなかなか空きの出ない人気枠だが、運のよいことにちょうど空きが出たとのことだった。
2020年になり、広告の効果が出たのか、Amazonの順位が一気に上がった。
なんと、カテゴリ別で1位になっていた。
総合ランキングでも100位内に入っていた。
驚いたな...嬉しい驚きだった。
その後、あの有名な斎藤一人さんを始め、僕が若いころからよく読んでいたスピリチュアル系の書籍の翻訳をされている山川紘矢さん亜希子さんご夫婦にも推薦していただいたりして、僕の本は広がっていった。
もう、本当に感謝しかない。
この本は書き上げた段階で、もう僕の手を離れていた。
あとは宇宙、全体にお任せの状態。
なんせ、僕はもう何の手出しもできないのだから。
僕は目の前にやってくる出来事に丁寧に、一生懸命対応するだけ。
もう自分で考えたり計画を立てたり、自分の努力で何かを成し遂げようとするなんてことはしない。
あれをやろう、これをやろう、をあえてしない。
全て自然に、宇宙に、全体にお任せする。
すると、何かがやってくる。
老子が言っていた"無為無"。
何もしないことを、する。
出版から約ひと月後、吉尾さんから連絡が入った。
「刀根さん、今朝、重版が決まりました。おめでとうございます!編集者として初めて重版がかかった時のような嬉しさです!」
発売ひと月で重版が決まった。
そして、約2週間後にさらにまた重版が決まった。
僕の本は、もうひとり歩きをはじめていた。
3月に入るころ、新型コロナが猛威を振るい始めた。
そして、4月になると、予定していた4月以降の研修が全てなくなった。
僕のメインの仕事である研修は、集合研修という形式で行うことが多く、つまり、みんなが集まる形式なので、中止か延期になってしまった。
しかし、これも全体の流れ。
僕はその流れの一部分にすぎない。
だから、慌ててもしょうがない。
出来ることをただ、淡々とやっていくのみ。
目の前に来ることを、丁寧にこなしていくのみ。
その間、本は順調に重版を重ね、7月になる頃には8刷まで来ることが出来た。
「通常、出版された本が重版される割合は2割弱と言われています。それが8刷なんですから、すごいですよ!」
吉尾さんは、嬉しそうにそう言った。
そうは言っても、きっと吉尾さんは僕の知らないところで、いっぱい動いてくれているんだろうけれど。
本当にありがとうございます。
Amazonのカテゴリ別ランキングは、8月になっても、ほぼ1位を続けていた。
僕は研修の仕事がなくなり、スケジュールが空白になった。
でも、なぜかワクワクする。
このまっしろなところに、宇宙は、全体は、いったい何を入れてくるんだろう?
次、どんな予想できない展開が、やってくるんだろう?
実際にいくつか、そういうものがやってきた。
『プチ断食リトリート』を主宰している『時空の杜』のオーナー中澤さんからは「『時空の杜』をソース・リトリートと名付けて、もっと心と身体と魂を感じるリトリートをたくさんやっていきたいんです。刀根さんに、ぜひ、一緒に新しい『時空の杜』を作っていく仲間になっていただきたいんです」とのお誘いを頂き、早速7月、8月、11月、12月のリトリートが決まった。
あの"氣"の素晴らしい場所でリトリートが出来るのは、最高に幸せなこと。
ネット番組『スピリチュアルTV』を主宰するいわぶちさんからも、講演会やセミナーの依頼を頂いた。
ほか、全国のがん患者の会からも、講演依頼が入ってくるようになった。
吉尾さんからは、僕が以前書いた小説の出版の申し出を頂いた。
出ていくものがあるからこそ、新たに入ってくるものがある。
なにも"ない"からこそ、新しいものが流れ込むスペースになる。
空白だからこそ、人生はおもしろい。
がんからの生還、突然の退職勧告、出版の中止...こういったことを経験した今、僕は思う。
受け入れられない状況の中で"苦しみ"を作り出していた"自分"を手放していくこと。
"苦しみ"を作り出していたのは『自我/エゴ』という"ニセモノ"の自分、生まれてから作ったプログラム(自動思考)にすぎなかったのだと、知ること。
この"自分"を手放せば手放すほど"本当の自分"に近づいていく。
そして、"本当の自分"とは、"宇宙"という流れの中の一部分であること。
だから、目の前に起こってくる出来事、宇宙が連れて来てくれたことに、抵抗せず、プログラムの自分で判断せず、過去の自分の握りしめたものに執着せず、軽やかに吹かれ、流されていく。
自分の"自我/エゴ"ではない直感と、目の前に展開する世界に、ひたすらゆだね、任せていく生き方。
"自我/エゴ"と"直感"の決定的な違いは、自我は頭で考えている『思考』だということ。
直感は『言葉』ではない"感じ"でやってくる。
"頭/ヘッド(自我)"と"ハート(直感)"あるいは、"恐れ(自我)"と"愛(直感)"と言ってもいいんじゃないだろうか。
頭(ヘッド)ではなく、ハートで生きる。
恐れではなく、愛で生きる。
計算ではなく、アホウで生きる。
流れがどこに向かっているかは、分からない。
どこに着くのかも、分からない。
しかし、それはきっと宇宙の最適解。
ただただ、それを信頼して身を任せる。
それが"サレンダー"という生き方。
僕の人生、これからなにが待っているか、さっぱりわからない。
でも、僕はこれからも、日々サレンダーをしながら生きていく。