「生前、父は『戒名はいらないよ』と言っていました。私もあまり深く考えずにいたのですが...。代々続く旧家の長男として育った父。もし、戒名がないなんてことになったら...。我が家ならではの事情から、私はある決断を迫られることになるのです。そして今でもその決断が正しかったのかと葛藤する毎日です」

■葬儀費だけを残して逝った父
父のベッドを囲み、「あの世の名前」だとか先に逝った人の戒名の話で盛り上がっています。
長いとか高いとか、祖先が長い名前だと急に短くできないとか、親戚たちは好き勝手なことを父に吹き込んでいます。
私でさえ父に戒名の話をするのは気が引けるのに、無神経に語る親戚に耐えかねて、つい私は言ってしまいました。
「こうします! 祖先は立派なあの世の名前を付けていただいていたかもしれませんが、父は普通の戒名を付けてもらいます! それで、もしあの世で、たいそうな名前がついてる人はこちらの列にどうぞ~とご飯が美味しいものをもらえたり、先にご飯がもらえたり、並ばなくてもよかったりという特別扱いをされるのであれば、私の夢枕に戒名変えてくれと出てきてお知らせして! そしたらお寺さんに言って、メチャメチャ長い戒名付け直してもらうから!」
みんな腹を抱えて笑っていました。
しかし、その爆笑を鵜呑みにしてはいけません。
本当にそんなことをしようものなら、後から寄ってたかって「兄さんの娘、本当にみっともないことをした!」と批判されるに違いないからです。
その後父は亡くなり、結局戒名は菩提寺で付けてもらうことに。
祖先とのバランスがあるらしく、それなりの戒名を付けていただきました。
最後まで戒名はいらないと言っていた父は、当然のようにその費用は残さず、自分の葬儀費用だけを残して旅立っていきました。
親戚の目を気にするより、父の希望を叶えたほうがよかったのだろうか...と思う日々です。
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