「私の父はトラブルメーカー。夫が厳しい態度を取ったことを根に持ち、私たち家族を毛嫌いしていました。ある日、立ち寄った実家でまた父がひ孫にまで酷いことを言うので、帰ろうとしたんです。その時、ひ孫が父にあるひと言を...。そしたら、父がボロボロ泣き出して」
■「ひいじいちゃん、僕はね...」涙を流した父
それはとある日曜日、久々に母の顔を見に実家に立ち寄ったときのこと。
家に入ると父にどんなひどい言葉をかけられるかわかりません。
そこで、戦々恐々としながらも庭で立ち話をすることにしました。
そこにわざわざ出てきた父は、相変わらず憎まれ口、嫌がらせ、睨みをきかせるなど、不愉快な態度のオンパレードでした。
そんな父の振る舞いに、憤慨とあきらめの感情しかわいてこず、帰ろうかと思っていたのですが、下のお孫ちゃん(男の子)はお構いなしでぐいぐいと父に話しかけます。
しかし、父は大人げなく「こっちに来るな!」、「うるさい」、「さっさと帰れ!」など、自分のひ孫に向かって罵詈雑言。
普通なら幼い子どもは泣き出してもおかしくない状況なのですが、この子は違っていました。
見かねて連れて帰ろうとする私を制して、何を言われようともぐいぐい父に話しかけます。
そしてついに「ひいじいちゃんはボクのこと嫌いなの?」と、父の顔をまっすぐに見据えつつストレートな質問を投げかけました。
父は少々怯みながらも「おう、大嫌いじゃ、さっさと帰れ」とひ孫に伝えるのです。
あまりのことに、孫の手をひいて帰ろうとしたそのときでした。
下のお孫ちゃんから信じられない言葉が飛び出したのは。
「そっか。俺はひいじいちゃんのこと大好きだよ。一緒に遊ぼ」そう言いながら、にっこり笑って父の手をぎゅっと握ったのです。
一瞬空気が止まったあと、父はなぜかぽろぽろ涙を流していました。
そしてその後、孫の言葉通り二人は一緒に遊び始めたのです。
父の涙の意味はいまだ分かりません。
「ホントは寂しかったんだろうな」とか、「ホッとして不覚にも泣けたのカナ?」なんてあれこれ想像はつくのですが......。
何はともあれメデタシ。下のお孫ちゃんがサクッと鮮やかにひいじいちゃんの心を溶かした瞬間でした。
それ以来、私の大切なお孫ちゃんは、2人ともひいじいちゃんとは大の仲良し。
実家に行くたびに相変わらず「また来たんか」と、乱暴な言葉は飛んでくるのですが、その言葉とは裏腹に、目じりの下がった父の姿がそこにはあるのです。
そんな姿を見るたびに、「ありがとう、私の小さなヒーロー君」と、心の中でつぶやく私なのでした。
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