「中学時代に憧れていた先輩に、高校生になってからアルバイト先で再会しました。運命を感じて幸福感に浸るのもつかの間、実はこの先輩には秘密があったのです」
■茶道クラブの先輩はとても美しく、素敵なひとでした
私は中学生の頃、茶道クラブに所属していました。
茶道クラブを選んだ理由としては、和菓子が食べられるかもしれないという不純な動機でした。
しかし活動が始まると、茶道の奥深さ、また日本独自のおもてなし文化や伝統などに触れ、歴史が好きな私にとって充実した時間になりました。
そして茶道クラブには、まぶしいほどに美しい女性がいました。
3年生のA先輩です。
A先輩は見た目の美しさはもちろん、茶道の心得や作法を完璧に習得しており、本当に素敵な人でした。
私はすぐにA先輩の虜になってしまいました。
A先輩のようになりたくて、茶道の本を読んで勉強したり、クラブ活動がない日には「エア茶道」と称したイメトレを行ったりしていました。
■憧れのA先輩と再会! しかし喜びもつかの間、裏の顔を知ることに...
高校生になり、地元の商業施設の中にあるハンバーガーショップでアルバイトを始めることになりました。
そして初日、私は運命の再会を果たすのです。
その再会の相手はなんと、あの憧れのA先輩!
彼女もまた、同じハンバーガーショップでアルバイトとして働いていたのです。
私は感激のあまり涙が出そうになりました。
当時はまだスマホもない時代、しかも2つ上の先輩と気軽に連絡を取り合うことなどできなかったため、A先輩が中学校を卒業してから、じつに2年ぶりの再会でした。
A先輩は私を覚えてくれていて、ここでもやさしく仕事を教えてくれました。
茶道は続けているものの、大学受験を控えているため「受験勉強の間は少し休まないといけないかな」と、笑って話してくれました。
憧れの先輩とこんなふうに普通の会話ができるなんて...! 私は完全に舞い上がっていました。
それからしばらく経ったある日のこと。
バイト先に行くと、お店の雰囲気がなんだかいつもと違います。
なにやら不穏な空気で、警察官もいます。
なにかあったのかと、社員の人に聞いたところ、売上の一部がなくなっていることに気がついた店長が警察に通報したとのこと。
売上金がなくなった...盗まれでもしたの?
自分のバイト先でこんなことが起きるなんて、高校1年生の私には信じられない出来事でした。
誰がそんなことを...。
家に帰ってからもなんだか落ち着かず、そわそわした気持ちでした。
次のシフトの日、私は浮かない気持ちで出勤しました。
そして、誰が犯人だったのかを知ることになりました。
A先輩だったのです。
売上の一部をごまかし、自分のものにしていたそうです。
どうしてそんなことを...私は大きなショックを受け、しばらく悲しみから抜け出すことができませんでした。
なにが彼女をそんな愚行に走らせたのでしょうか? 話を聞くことができないまま、A先輩は辞めていきました。
それからしばらくして、大学には無事合格したと風の噂で聞きました。
それを聞いて、私は心からほっとしたことを覚えています。
お店側の配慮で、大事にならなかったのかもしれません。
あれからA先輩とは会っていません。
盗みは許されることではありませんが、それでも私にとってA先輩は中学時代憧れの先輩であることに変わりないのです。
過去の失敗を乗り越え、幸せに暮らしていてほしいと願っています。
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