「60代男性です。健康のためにタバコをやめる方は多いと思います。かくいう私もその1人です。しかし、タバコは健康に良い、と固く信じて吸い続ける方もいらっしゃるのです」
アラフォー、アラフィフ世代の女性を中心に、実体験エピソードを寄せてもらいました。年齢を重ねると健康や人間関係、お金などさまざまな問題が発生しますが...。あなたならこんな時、どうしますか?
■「タバコは健康にいいんだよ」力説する先輩に心酔してしまった若き自分
私が町役場に就職して働き始めた頃の話ですので、1985年のことです。
私は町民課に配属されたのですが、課の先輩職員がDさん(当時30代前半)でした。
「やあ、新人さん、よろしく頼むよ」
そう言ったとき、Dさんのくわえたタバコがぽっと赤くなったのを妙に覚えています。
Dさんは自他共に認めるヘビースモーカーでした。
最近はすっかりタバコの害が知られるようになり、喫煙者というだけで眉をひそめられることもありますが、当時は成人男性はタバコを吸って当たり前のようなところがありました。
とはいうものの、1日に2箱以上吸うと聞いて少々心配になりました。
数日後の歓迎会の席でたまたま隣り合わせたDさん。
「そんなに吸って大丈夫なんですか?」
次々とタバコを吸うのを見て、つい口にしたのですが、するとDさんはニヤリと笑いました。
「何言ってんの!? まさか吸ったことない?」
唐突に聞き返され、あっけにとられながらうなずくと...。
「もったいない!? ぜひ吸うべきだよ!」
もったいない、と言われた意味が分からず、首を傾げていると、Dさんが語り出しました。
「タバコは素晴らしいんだよ。ニコチンには殺菌効果があるし、過剰な食欲を抑えることもできるから食べ過ぎないで済む」
「僕が吸っているのはメンソール入りだから、喉の粘膜も守ってくれる。タールはちょっと問題だけど、フィルターを付ければ除去できるからね」と、一気にまくし立てられました。
そうです、Dさんは「健康のために」タバコを吸っている人だったのです。
タバコの有用性について嬉々として語る彼の目はなんとも印象的で、大学を出たばかりで世間知らずだったこともあり、そんなものなのかなとすっかり信じてしまいました。
■吸い始めたタバコは「体質に合わず」早々に禁煙することに
Dさんは勤務中もタバコを手放せない方でした。
当時はいまほどタバコに対する風当たりは強くなく、自分のデスクで吸っていても文句を言う人はいませんでした。
さすがに業務で窓口に向かうDさんの口にタバコがくわえているのを見て、課長が咳払いで控えるよう警告を送ることもよくありました。
私もすっかりスモーカー気取りになって、Dさん推奨のメンソール入りのブランドを吸っていました。
ところが、吸い始めてしばらくすると高校卒業以来、落ち着いていた喘息が再発してしまい、医師に「早死したくないなら」と言われて禁煙することにしました。
口寂しさにガムを噛んでいたところをDさんに見咎められ、事情を話しました。
「そりゃあ残念だったねえ、まあどんないいことにも体質に合わない、ってことはあるからね」と、Dさんはくわえタバコを得意げにくゆらせていました。
現在、Dさんは70歳を過ぎましたが元気です。
「風邪ひとつ引かんよ、こいつのおかげさ」と自慢げに(最近は流行りの電子になりましたが)タバコをちらつかせます。
本当にタバコのおかげかどうかは誰にも分かりませんが、Dさんはそう信じているのです。
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