主人が驚きつつ理由を聞くと、娘の親友の子は無料でやってもらったというのに、どうして私からはお金を取るの? ということでした。
主人は「娘の親友へのプレゼントとして、美容師である自分が担当したのではなく、娘がトリートメントだけをした」ということを伝えたそうです。
そして、「納得してくれたかはわからないけれど、とにかく支払いはしてもらったよ」ということでした。
それから、そういった「友人を名乗って無料のサービスを要求する人」が頻繁に来るようになり、主人は若いお客がくると「もしかして...?」と疑心暗鬼になってしまいました。
このままでは営業に差し障る、そう思っていた時、高校のPTA役員の会から我が家が呼び出しを受けました。
学校につくと、PTA専用会議室に、PTA役員のほか、校長までが同席しています。
その様子に嫌な予感がしましたが、その予感は的中しました。
「あなたのお店では友だちからもお金を取るのか!」
開いた口が塞がらないとはこのことです。
慈善事業ではないこと、商売として営業をしているためお金を払ってもらわなければ施術はできないことを伝えました。
PTAの役員は「タダでやってもらった人もいるのに不公平ではないか」「子どもたちが傷ついている」と私たちを糾弾しました。
私は主人と娘の名誉のために、いじわるでしているのではないことを何とか伝えようとしましたが、大人が大人に怒鳴られるという異常な室内で、ただ体が震え、声が出せなくなっていました。
ですが、「ああ、味方は誰もいないんだ...」と思ったときです。
それまで黙っていた校長が口を開きました。
「いじめが行われたということで同席したが、こんな非常識な話は聞いたことがない」
そう、大きな声を出してくれました。
「商売をやっている人に対して無料を要求するのは、無給を強いるのと同じである」
校長が同席してくれていて、本当に、本当に良かったと思います。
それから無茶な要求をする人は来店していませんが、あの子がタダになったなら私も、断られたらみんなで糾弾するという「集団心理」の恐怖を目の当たりにしたできごとでした。
今でもあのPTA専用会議室に足を踏み入れた瞬間の空気と視線は忘れることができません。
漫画:佐々木ひさ枝/原案:「毎日が発見ネット」みなさんの体験記
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