「私には時間がないのよ!」癌で苦しんだ姉が教えてくれたこと

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ペンネーム:うずら
性別:女性
年齢:53
プロフィール:癌で苦しむ姉が教えてくれたのは、生きていることがどれほど幸せかということ。姉の闘病生活と、残された時間について書かせていただきました。

※ 毎日が発見ネットの体験記は、すべて個人の体験に基づいているものです。

「私には時間がないのよ!」と姉に電話口で強く言われたとき、姉は癌で3回目の手術を終え、苦しい抗がん剤治療にも耐え、いつ襲ってくるかも知れない死の恐怖に直面していました。私にニューヨークのミュージカルを見せたくて、「一緒に旅行に行く」と言って誰の話も聞きません。

正直に言って、子供の頃から姉とは仲が悪く、一生この距離を縮めることはできないだろうと思っていました。末っ子である私を特別扱いする両親に対し、嘘ばかりついていた姉。嘘をついていたのは愛情を求めていたからだというのに、そんな姉を叱りつけてばかりの両親。姉はずっと私に嫉妬をし続けながら、子供時代を過ごしていました。

姉の虚言壁は、大人になると拍車がかかり、周囲の人をたくさん傷つけながらさらに悪質になっていったのです。

そんな姉の心を満たしてくれたのは、姉の夫でした。姉は結婚してから嘘をつかなくなりました。義理の兄は歯科医で、経済的にも裕福。結婚してから姉は料理に夢中になり、義兄に最高の手料理を食べて欲しいと食材にまでこだわりながら、毎日幸せな日々を過ごしていたのです。

ですが、姉は45歳の頃から腹痛を訴えるようになりました。病院に行って検査をしても何も見つからず、精神科を勧められて精神安定剤を飲む日々。薬を飲んでも痛みが治まらない状態が続き、他の病院にも行ってみましたがやはり結果は同じ。

癌であることが分かったのは、3件目の大学病院でした。その間、半年という月日が経っていました。

1回目の手術では、姉は苦しいながらも手術の成功を喜び、リハビリに専念していました。それが2回目、3回目と抗がん剤が続き、姉の精神はボロボロになっていきました。姉は私に、「ねえ、私、何か悪い事したと思う?正直に言って。こんな思いをしなきゃいけないような事したかな?」と聞いてきました。

嘘だらけで感情的。姉は確かに問題の多い人でしたが、そんな風になってしまったのは心が満たされなかったから。私は「気にしなくていいよ」と答えました。そして、姉が初めてのアルバイトで母に湯沸かし器を買ってあげた話や、仕事で頑張っていた時の話をしました。

その時、姉は「生きている間に一緒に旅行に行きたい」と話し、私も「パスポート取ってくるね」と約束したのでした。

姉とはずっと仲が悪かったけれど、姉も私も、二人で楽しい時間を過ごしたいという憧れを持ち続けていたのです。

姉と約束したのはいいのですが、退院後の姉の容態は不安定で入退院を繰り返し、最終的には病状を考えて比較的近いハワイに行こうという話にもなりました。ですが、本当に行きたかったのはニューヨーク。飛行機もホテルも予約を取ったものの、姉は旅行に耐えられる状態ではありませんでした。

姉が昏睡状態になる前には、パスタの美味しい食べ方や、煮物の作り方などを詳細に話していました。私に料理を教えたかった、とも。

そして、「もしも一緒にニューヨークに行けなくても、絶対にミュージカルを見に行って欲しい」と言い残して、昏睡状態になりました。


姉が私に教えてくれたことは、いま過ごしている時間が当たり前の時間じゃないということ。残された私たちは、生きている時間を大切にしなければなりません。経済的理由でニューヨークにはまだ行けていませんが、いつかきっと姉が言っていた「本物のミュージカル」を見て来ようと心に決めています。

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健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
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