行かせてあげたかった、両親の夫婦国内旅行

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ペンネーム:こぼ
性別:女
年齢:31
プロフィール:生後8ヶ月の息子の育児に大忙しな日々です。実家には90歳前後の祖父母ともうすぐ還暦を迎える父母、そして30歳未婚の弟がいます。育児をしながらも高齢の祖父母の様子が気になる今日この頃です。

現在、実家から離れた県で夫と生後8ヶ月になる息子と3人で暮らしていますが、大学卒業後、結婚するまでは実家の近くで就職し、しばらく実家での家族との生活を満喫していました。私にそろそろ結婚...という話が出始めた頃、父からこんな話を持ちかけられました。

「長期連休をとって、母さんと九州旅行にでも出かけようと思う」

私は、「行っておいでよ!」と即答。というのも、家には高齢の祖父母がいて、母が結婚した当初から祖母は厳しく、また農家をしていた事もあって旅行という旅行に出かけた事がなかったからです。私も幼い頃から時間をかけて家族でゆっくりと買い物を楽しんだり、数日の旅行というものをした記憶がありません。それに加えて祖父がアルツハイマー型認知症を発症してからは、下の世話などの介護負担もあり、母は家にこもりっきりだったのです。

私が仕事を辞めて、結婚して引っ越すまでの家にいる数ヶ月間。その間に決行するのが最後のチャンスと思えました。車を運転するのが好きな父。宿泊準備だけをして行き当たりばったり、気ままに旅をしたいと母と笑って話していました。私も結婚前の最後の親孝行だと思い、「まかせて!」と力強く答えたのです。

しかし、出発する1週間前に事件が起こりました。祖父が風邪をひいてしまったのです。それだけならよかったのですが、薬の飲み合わせなのか幻覚を見るようになってしまいました。蜘蛛の巣が部屋中に現れたり、戦時中の兵隊が見えたりするようで、時折「おおーい!」と興奮した様子で私達を呼ぶことが増えました。

それに加えて便秘が悪化。ある日、お腹が苦しいのかトイレにこもって力んでいたところ、元々高かった血圧がさらに急上昇したようで、鼻や目から出血を起こしてしまいました。トイレの床や壁にまで血が飛び散って、様子を見に行って現場を目撃した母も私も祖母も大慌てでした。

当の本人は便座に腰掛けながらガクガクと震えていましたが、大柄な祖父を運ぶ事は容易にはできません。母や祖母が祖父の出血を拭ったり抑えたりしている間、私が救急車を呼びました。あまりに慌てていて、受け答えがつっかえつっかえだったのを覚えています。

見た目は血だらけの酷い状況でしたが、処置は外来だけの簡単なもので済んだようで入院もありませんでした。祖父は自宅に帰宅し安堵した様子でしたが、それとは逆に私と祖母はその後も不安でした。もし父や母が不在の間に何かあったら・・・。祖母と私、弟だけではわからない事だらけです。もしかしたら最悪なことにもなりかねない。父もそう思ったようで「旅行は中止だな」と静かに私に告げてきました。行き当たりばったりの旅行の予定だったので、父のその言葉一つですんなりと計画は白紙になりました。ホテルの予定をキャンセルしたりする事もなくあっけないものでした。

楽しみにしていた旅行を中止と決断してくれた事に内心ほっとしつつも、「何かあったら後悔してもしきれないからね」そう言った母の顔には隠しきれない残念な思いがにじみ出ていたのを見て、私も残念な気持でいっぱいになりました。

結局、祖父の幻覚や出血事件はその時だけで、認知症は患っていますが今も元気に暮らしています。「旅行、行かせてあげたかったな...」結婚して他県で生活しながらも、ずっと心残りでした。しかし、ついに良い機会が訪れようとしています!私が息子を出産して仕事を辞めたのです。さらに、父の退職もあと3年と近づいています。還暦のお祝いとして旅行をプレゼントしようと夫と計画しています。息子がある程度大きくなってからなら、私一人でも息子をみながら祖父母の世話もできそうです!弟や夫にも協力してもらって、父と母に旅行を楽しむ時間をプレゼントしようと思っています。まだまだ先の計画なので、いつまた祖父の状態が悪くなるかわかりません。でも、それでもいつか必ず父と母を旅行に行かせてあげたいと強く思っています。

健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
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