性別:女
年齢:54
プロフィール:昨年の秋に認知症でパーキンソン病をもった父(85歳)を呼び寄せ、親子三代で暮らしています。
※ 毎日が発見ネットの体験記は、すべて個人の体験に基づいているものです。
関西で独り暮らしをしていた父。認知症の症状が顕著になったので、関東の我が家に呼び寄せたのですが、3カ月ほどしてから急に人恋しくなったのか、無性に兄弟に会いたいと言い始めました。
85歳の父が兄弟の中では一番年上で、他の兄弟は父よりも若いのですが、そうは言っても皆さんそれなりに高齢だし、父と真ん中の弟だけが関東、あとの兄弟は大阪以西に暮らしているという状態。みんなに会いたいと言われてもそんなに簡単じゃありません。父には「どう考えても無理だから」といって突っぱねていたのですが、そのうち父が妄想ともいえるようなことを口にし始めたのです。
「明日、兄弟のみんなと食事をすることになってるんや」「新幹線に乗っていかなあかんけど、最近切符を買ってないから一緒に買いに行ってくれるか」
認知症もあるので、自分の心の中の願望が夢にでも現れるのか、日ごとに強くなっていきます。
そんな父と向き合うのもしんどくなり、たまたま電話をくれた父の一番下の弟に相談すると、私や父の都合のいい場所と日にちを決めてくれたら行くと言ってくれたのでした。
新幹線1本で行けるところで宿が取れないだろうか...と思いインターネットで検索したら、
熱海の旅館がヒット。ちょうど6家庭12人が4人ずつで泊まれる3部屋の空きが見つかり、早急に予約し、計画からわずか一月ほどで兄弟旅行が実現したのです。
父以外は、それぞれ近くに暮らしていることもあり、ことあるごとに父の実家には集まっていたようです。ただ、旅館だとまかないの心配もいらず、ゆっくり話も出来て、温泉にも浸かれるので、女性陣にとってはちょっと嬉しい極楽気分。
久しぶりに兄弟に会えた父も、かなり張り切り「畳みの上に座っても立つことができるで」などと元気な様子を見せたりするなどして、とても和やかな時間を過ごすことができました。
下は69歳から上は85歳までの6人兄弟。昔のことだから兄弟の数は多いのです。祖母が生前よく「兄弟みんな仲良く」と言っていた通り、この兄弟は人数の多い割には、皆さん仲良し、奥さん同士も仲良しです。
私の母はもうこの世にいませんが、この場所にいられれば良かったのにと思いつつ、こんな姿を祖父や祖母が見たら、きっと微笑ましいまなざしで見ていることだろうと、ひとりだけ娘として参加した私もそんな風に思えるほど楽しい時間を過ごしたのでした。
遠方から来た叔父や叔母は、数十年ぶりに新幹線に乗ったと大はしゃぎで、切符を2枚同時に入れないといけないのを知らなくて1枚ずつ入れたとか、新幹線から出る時には2枚入れた切符のうち1枚が出てくるのを知らなくて、改札を抜けてから呼び止められたとか、高齢者あるある珍道中も楽しかったと言ってくれましたが、久しぶりに会った叔父や叔母も父よりはしっかりしているとはいえ、本当に年を取ったことを感じます。
なので、きっとこの熱海温泉旅行が兄弟会の最終回。たった1泊でしたが、思い切って計画して実現することができ、本当に良かったと思えた旅行になりました。
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