性別:女性
年齢:54歳
プロフィール:女性がクリスマスケーキに例えられていた頃、男女雇用均等法ができたというのに寿退社してしまい、その後3人の息子の子育てが終わったとたん、義母と実父の介護が始まるという典型的な昭和世代。
子どもの頃、阪神神戸線の沿線に住んでいた私。阪急電車に乗れば必ずポスターを見るし、本場の宝塚歌劇場まで、当時の西宮北口経由でもさして時間のかからないという環境にありながら、まったくと言っていいほど宝塚に興味がありませんでした。
小学校3年生くらいの時、母と母のお友達親子と一度だけ観に行きました。大階段を大きな羽を付けたスターが降りてくるの見て、「なんだか危なそうな階段」と、子どもながらに冷めた感想を抱いたのを覚えています。
その後、高校で仲良くなったお友達が大の宝塚ファンで、入り待ちしたり出待ちしたりして近くから見たとか少し触れたとか、まるで恋人にでも出会ったかのようにはしゃいでいました。パンフレットなども何度も見せてもらったのですが、スターと呼ばれる人はみんな女性なのに......と当時の私は思ったものでした。
関西を離れて30年近く経ち、そんな古い記憶はすっかり抜け落ちていました。
最後の子育てが終盤を迎えた51歳の頃、再び宝塚が私の前に現れました。息子のPTAのイベントの観劇が、東京宝塚劇場での『ベルサイユのばら』だったのです。宝塚歌劇団が100周年を迎えた記念の年だったこともあり、観劇の企画に上がったのでした。PTAでチケットを手配してくれるということで、せっかくなので参加することにしました。
東京宝塚劇場は、生まれて初めて訪れる場所でした。劇場に入ってびっくりしたのは、エントランスの綺麗なこと。赤い絨毯が敷かれ、頭の上には豪華なシャンデリア。反抗期から一向に抜け出せない息子との現実や、日々の喧騒で疲れた私を、大きな翼で包み込むように出迎えてくれ、手をとって現実からかけ離れた異空間に誘ってくれる、そんななんとも言えない不思議で素敵な感覚でした。真っ赤な絨毯がとてもふかふかしているので、そんな気分になったのかもしれません。
まるでつま先で歩くような心もちと、初めてではないのに初めのようなワクワクドキドキ感で観た『ベルサイユのばら』。そのオスカルのカッコいいこと!考えてみたら、演じているのは息子とさして年齢の変わらないお嬢さんなはずなのに、この感覚は何だろう?子どもの頃、冷めてみていた自分は何だったんだろう?今、はじめてわかる友達のトキメキ!半世紀以上生きてきて、人生も下り坂に入って随分と経つというのに、そこには「冷めた」のではなく「覚めた」私がいました。「これっ、楽しい!?」もう、ここは18世紀のフランス!すっかり芝居に引き込まれてしまいました。
人生が下り坂の中、頭には白いものも混じり、顔にはほうれい線ができ、目の下にはクマ......もしかしたらそんな現実からの逃避なのかもしれません。だとしても、カッコいいものはカッコいい!帰宅後もネットで出演者を調べたら、背は高いし、頭は小さいし、スタイル抜群で、素顔でも超がつくくらいカッコいい!もうすっかりファンになってしまいました。
残念なことに、今は親の介護で家を空けられないので、この介護生活が終わったら、自分へのご褒美も兼ねて東京まで宝塚を観に行きます!もちろん、今度は自分でチケットを買って!
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