「去年の年末、デパートで短期アルバイトをしたときの話です。お歳暮に馴染みのない若いメンバーに、年長者の私が基本的なことを指導することになりました。そんな中、お歳暮を注文する和服のご婦人が現れました。対応したのは男子大学生です。『のしに名前はいらないわ』と言われ、『分かりました』と彼が言うと、事件が勃発したのです...」

■「笑った理由を聞いているのよ!」謝罪しても収まらない様子に...
「何笑ってるのよ! 私、何がおかしなこと言った?」
和服の女性が怒りだしたのです。
突然の出来事で唖然としましたが、すかさずフォローに入りました。
「のしにお名前なしでよろしいですね? かしこまりました」
話をそらそうとしても和服の女性の怒りが収まりません。
「責任者呼びなさいよ!」
「リーダーは私です」
そう答えたのに、再び男子大学生に食ってかかります。
「どんな教育してるのよ! なんで私を笑ったのか言いなさいよ!」
男子大学生に食って掛かる和服女性。
「のしのお名前がいらないパターンを私が教えなかったので、私の責任です。申し訳ありません」
そう答えても
「笑った理由を聞いてるのよ!」
男子大学生は黙って下を向いていました。
答えないでいいからね、と心で願いながら。
何度謝っても収まらない和服女性。
騒ぎに気付いたデパートの社員さんが割って入ってくださって、お客様を椅子のあるカウンターに連れて行ってくださり事なきを得ました。
和服の女性が去った後、男子大学生に謝りました。
「ごめんね、きちんと教えなくって」
「守ってくれてありがとうございました」
怖かっただろうに、きちんとお礼を言うなんて感心しました。
「愛想笑いしてただけでしょ?」
「そっす。なんか無意識に。接客だからと思って笑っちゃったんです」
お客様が彼の愛想笑いのどこに気に障ったかは分からないで終わりましたけど、彼はそれがきっかけで一皮むけたようです。
「初日が初日だったんで、もう怖いものないっす!」
その後の仕事は積極的に頑張ってくれました。
その話を聞いた女子大学生スタッフにも「なんかあったら俺と〇〇さん(私)が出るから大丈夫だよ!」と頼もしいことまで言っちゃって。
怖い思いをさせてしまったけど、結果的に成長できたようで良かったです。
短期アルバイトの最終日は笑い話をしてお別れしました。
今もどこかで頑張っているんだろうと思います。
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