<この体験記を書いた人>
ペンネーム:なんとも
性別:女性
年齢:54
プロフィール:私+夫+高3長男+高1長女の4人家族。子どもたちが小さい頃はファミレスの外食がちょっとした贅沢でした(笑)
私達夫婦は現在54歳で同い年です。
今から8年くらい前、平日の昼間、2人でファミレスへ行ったときのことです。
その日は自営の夫の手伝いで、客先へ配達をした帰りでした。
田舎のファミレスでしたが、ランチタイムはそこそこ混雑していて、私たちは2人がけの小さなテーブルに案内されました。
隣の席に手を伸ばせば届くほど、コンパクトなスペースです。
当時、私たちは結婚して10年ほど。
2人の子どもは小学生になり、平凡な毎日を送ってましたが、ほとんど会話もない毎日。
仲は悪くありませんでしたが、私は極力夫としゃべりたくなくて、外出時も常に携帯電話をいじりっぱなし。
夫も夫で、そんな私に話しかけることもなく、同じように携帯電話をいじるという似た者同士でした。
注文の料理が来ても、携帯電話をいじりながら黙々と食事をする私たち。
「コショー取ってくれない?」
「ん」
今となっては笑えるくらいに寡黙な2人でした。
ランチタイムもピークを過ぎ、帰るお客、入店するお客が入り交じり、私たちの隣のテーブルにも新たなお客が着席しました。
私たちは食事を済ませ、食後のコーヒーも飲み終えたので、私はお財布を出してお会計のお金を準備しましたが...。
「ねぇ、1円玉持ってない? あと、1円あればピッタリ払えるんだけど...」
お会計は2人で1,968円くらいの金額でしたが、手持ちの小銭が1円不足してました。
「ん」
夫は自分の財布を開けて、じゃらじゃら小銭を漁りました。
こういうときに限って1円玉がありません。
紙幣は持っていたけど、くずしたくない妙な意地。
2人で必死に探しましたが、どうしても見つかりませんでした。
私はふーっとため息をついて「仕方がないなぁ...お札を使うかな...」と思っていた矢先のことです。
「あの...」
心配そうな言葉とともに、小さな手が私たちのテーブルに伸びてきたのです。
隣のテーブルに座っていた70代くらいの小柄な女性でした。
彼女は御主人と思われる男性と一緒に、心配そうな顔で私たち2人を見つめていました。
そして、小さな声で言いました。
「あの...もし...足りなかったら...これを使って...」
彼女の手の平には、なんと1円玉が...。
その瞬間、私たちは夫婦そろって顔が真っ赤になりました。
「いえっ! 違うんです! 大丈夫です! 小銭はないけど、大きいお金ならあります! ご心配かけてすみません!」
こんなことを、慌てて老夫婦にしゃべったと思います。
夫も恐縮して頭を何度も下げました。
老夫婦の目には、私たちが1円足りなくて、お会計に困ってるように見えたのでしょう。
しかも至近距離のテーブルなので、会話は丸聞こえ。
何とかしてあげなくては...という思いからの行動だったと思います。
私たちがそそくさと帰る準備をしつつ、老夫婦に再度一礼すると、お二人は穏やかに微笑んでいました。
無事にお会計を済ませてファミレスを出ると、私と夫はこらえ切れずニヤニヤ。
帰りの車内はその話題で持ちきりでした。
「私ら...どんだけ深刻そうに見えたのかな!?」
いつもは静かな車内なのに、賑やかなおしゃべりは続き、夫がしみじみと言いました。
「ああいう優しい人たちがいるなら世の中捨てたもんじゃないね」
1円玉の優しい気づかいが、私たちの心をプライスレスに豊かにしてくれたのは間違いありません。
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