妻を独占するため、外出やスマホも禁止する夫。あまりにも身勝手な束縛を受ける妻は、次第に自分が悪いのだと思い込んでしまい...。『うずら男〜モラハラかまって夫が人間をやめるまで〜』(KADOKAWA)は、夫の異常な行動に翻弄される妻を描いたセミフィクション。ペットと一緒にお世話してほしいという奇行だけでなく、夫のモラハラによる「共依存」の怖さも感じるこの作品のあらすじを、著者の前川さなえさんのコメントと共にお届けします。

そんな話題作『うずら男〜モラハラかまって夫が人間をやめるまで〜』をご紹介し、前川さんにお話を伺っていきましょう。
『うずら男〜モラハラかまって夫が人間をやめるまで〜』あらすじ

主人公のあすかは、和史の不器用ながらも純粋な性格に惹かれて結婚しますが、彼の束縛の強さや支配的な態度に、結婚後少しずつ違和感を覚えはじめていました。

妊活中や妊娠中にも自己中心的な言動が目立ち、出産後も育児は非協力的。それどころか、赤ちゃんに嫉妬したり、自分が優先されないことに拗ねたり怒ったりするなど、和史の子どもじみた態度に疲弊していきます。
ひとり息子に兄弟がいたほうがいいと考えたあすかは、和史に頼みこんで2人目を妊娠。やがて次男を出産します。


しかし子どもの世話に追われるあすかに向かって、和史は自分を優先してもらえない不満から、「産まなければよかったんだよ2人目なんて」と発言し、あすかを凍りつかせます。

さらに、妻子の外出や子どもの習い事も制限し、長男のサッカー教室体験にさえ浮気を疑って外出禁止令を出すなど、次第に束縛を強めていきます。
あすかが外で働くことを検討しはじめると、和史は妻が外で働くことを阻止するために、ある嫌がらせを考えます。スーパーでうずらの卵を買ってきて「温めて孵化させろ」と一方的に命じるのでした。

あすかは和史の機嫌を損ねまいと言うとおりにすると、奇跡的にすべての卵が孵化。今度はうずらの世話をする生活が始まるのでした。

子どもたちのワンオペ育児、まるで子どものようにかまってほしがる夫の世話、それに加えてうずらの雛たちの世話...。このうずらの登場によって、夫婦の関係は予想もしない方向へ変化していくことになるのです......。
作者・前川さなえさんインタビュー
――これまで前川さんは「ぷにんぷにんぷ」などの育児コミックエッセイを描かれていましたが、今回のようなオリジナルの長編ストーリー漫画を描かれたのは初めてですよね。描いてみて気づいたこと、難しかったこと、あるいは楽しかったことなどあれば教えてください。
前川さなえさん:ショート漫画は創作で描くこともありましたが、ここまでの長編でオリジナルというのは初めてでした。さらにジャンル的にも今までの自分の作風とは大きく違うので......。今回、軸はホラーなので担当さんにギャグを封印されていたのですが、根がお笑い漫画家なので、無意識にギャグ要素を入れ込んでしまっていたようでよく注意されました(笑)。

――そうだったんですね(笑)。本作は、夫婦間のモラハラや共依存といった、センシティブな問題を扱っています。執筆にあたって、特に配慮した点や、難しかった点はありますか?
前川さなえさん:作中で明言していないですが、夫には発達障害があり、妻はそれによって精神的に不安定な状態に陥っていくという設定でしたので、関連書籍などを読みあさって勉強しました。適当な想像で描いてはいけない内容だと思ったので。

――今回の作品は、読者や周囲の方の反応はいかがでしたか? どんなコメントが多かったでしょうか。
前川さなえさん:やはり「モラハラ夫に本気でムカついた」とか「ホラー描写がこわかった」というコメントが多くて、今までの作品だと寄せられたことのない感想ばかりで新鮮でした。
――今回の作品は夫婦のいびつな関係を描いたストーリー漫画でしたが、今後挑戦してみたいテーマはありますか?
今回の漫画でも「毒親」に触れるエピソードがありましたが、親子関係についても掘り下げると深い深いテーマなので機会があれば挑戦してみたいです。描いていく上で身につまされることもいろいろ出てきそうでこわいですけど......!
といいつつ、料理系や動物系のほっこり漫画もやはり描きたいです(笑)

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ユーモラスでほのぼのした育児エッセイで知られる前川さんが挑んだ、まさかの異色作品。夫婦の間にある歪んだ愛情を描き、家庭という閉鎖空間の中で生み出される心の闇にも迫っています。変幻自在な表現力を見せる前川さんの、今後の活躍にも注目です!
取材・文=レタスユキ








