読むほど謎が深まるミステリーコミックエッセイ『怖いトモダチ』。岡部えつさんの原作小説を、イラストレーター・漫画家のやまもとりえさんがコミカライズした作品で、「私のまわりにも、いる...」「人の怖さにゾッとした」と大きな反響がありました。
人気エッセイストの中井ルミンを中心に、人々の思惑や言い分が交錯。あちこちで食い違う人々のエピソードは「誰が本当のことを言っているのか」と混乱を招き...?
今回は、コミカライズしたやまもとりえさんに『怖いトモダチ』についてインタビューしました。
『怖いトモダチ』あらすじは...
人気エッセイストの中井ルミンは、どんな悩みにも寄り添い、魅力的で尊敬できる存在として、オンラインサロンを主宰。合言葉は「みんなで幸せになろう」。
サロンには大勢のファンがいて、ルミンはメンバーから慕われていました。ところが、奇妙な違和感が...。
ルミンはブログに、中学時代の同級生・Sちゃんのことを綴っていました。農家の娘であるSちゃんが、「牛の糞臭い」と同級生にいじめられ不登校になったこと。そして、ルミンの案でクラス全員からSちゃんのいいところをあげ、手紙にして渡したところ、学校に来るようになったこと。けれど、ブログを読んだ元同級生は呟きます。
「このブログ...うそばっかり。だって沙世ちゃんあの次の日、自殺未遂を起こしたのに...」
カリスマ性のあるエッセイスト、中井ルミン。「真実の顔」とは一体?
夢中で読んだ原作小説
――小説「怖いトモダチ」を初めて読んだ時の感想はいかがでしたか?
やまもとりえさん:「怖いトモダチ」の小説を最初に読んだのは電車の中でした。10話分くらい読み進めていたのですが、少しずつルミンの輪郭がはっきりしていくのが面白くて、もう夢中になってしまって...。降りる駅に着いても気がつかなかったくらいです。電車から降りた後も「ルミンはどういう人なんだろう」としばらく考えていました。
構成から作るコミカライズの面白さ
――小説のコミカライズとは、どのようなプロセスで作られるのでしょうか?
やまもとりえさん:今回のコミカライズは、原作者の岡部さんから「お好きに料理してください」と言われていたこともあり、編集さんにたくさんのアドバイスをもらいながら描き進めていきました。「小説の内容をそのまま描くのもいいけれど、今回は構成を変えてみましょうか」と、いろんなパターンを考えてくださって、すごく助かりました。その後、編集さんと2人で登場人物や時系列を確認して、不自然じゃないように再構成させてもらいました。
――たくさんの登場人物がいて、人間関係が複雑に絡み合うお話なだけに、再構成するのは大変な作業だったと思います。小説をコミカライズするにあたって、どんなことが難しかったでしょうか?
やまもとりえさん:小説の内容を漫画の中で全部描こうとするとぎゅうぎゅうになってしまうので、どこを描いてどこを削るか...というのは1番悩みましたね。
誰にも共感はできないけれど、似ているところも
――登場人物の描き方でこだわった部分はありますか?
やまもとりえさん:普段は穏やかなルミンですが、自分の矛盾を突かれた時など、怒りを露わにするシーンが度々出てきます。ルミンが怒るシーンでは表情を見せないように描きました。その方が伝わるかなと思ったので。
――たくさんの登場人物が出てきますが、やまもとさんが最も共感できるのは?
やまもとりえさん:正直に言うと、誰にも共感できません。でも全員少しずつ私にも似ているのかもな...とも思います。
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嘘を積み重ね、自分を大きく見せるうちに、何が本当なのか本人すらわからなくなる...。私たちのすぐ近くにも、ルミンのような人はいるかもしれません。