「劣等感を乗り越えろ!」令和こじらせ独身女子のサバイバル術/どうせなら、こじらせと仲良く生きたい


大日野は第1話で「好きな男子と話せない」、第2話で「自分の望みを言えない」、第3話で「冒険できない」ことに悩みますが、根本の原因はすべて「自己肯定感が低いから」です。

ただ、原因がわかったところで、多感な時期に下がってしまった自己肯定感を大人になってから高めるのは、そう簡単なことではありません。

鬱に悩んでいる人に「もっと物事をポジティブに考えなよ」と言うのと同じで、それができたら苦労はしないのです。

「こじらせる」がもともと「病気」を主語とする動詞だったことは、それを象徴的に表してはいないでしょうか。

個人が病気の予防や治療に努力することはできますが、いったんかかってしまったら簡単には治らない病気もあります。

そういう病気を個人の努力で根治することはできません。

こじらせ_002.jpg こじらせ_003.jpgでは、どうすればいいのでしょうか。

答えは「病気とうまく付き合う」です。

糖尿病の方なら食事に注意してインスリンを常備する。

心臓に難がある方なら激しい運動を控える。

そういう努力や工夫によって命を永らえさせる。

ただ当然ながら、病気を持っていない人に比べて生活は大きく制限されます。

人生に理不尽な面倒さがついて回ることに、気が重くなることも多々あるでしょう。

「こじらせ」という完治の難しい病にも、同じ悩みがつきまといます。

ところが大日野は、その困難にきわめてポジティブに立ち向かいます。

狙うのは完治ではなく対症療法。

「好きな男子と話せない」に対しては「好きなものでバリアを張る」、「自分の望みを言えない」に対しては「ちゃんと要求する」、「冒険できない」に対しては「トントン拍子を受け入れる」。

「こじらせ」という自分の属性を変えることはできないけど、「こじらせ」とうまく付き合うことはできる。

タイトル内の「こじらせと仲良く生きたい」には、そんな意味が込められているのではないでしょうか。

こじらせ_004.jpg こじらせ_005.jpgシラフで生きるな「好きなものでバリア!」で自分を守れ/どうせなら、こじらせと仲良く生きたい(1)

 

文・稲田豊史/1974年、愛知県生まれ。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年よりフリーランス。著書に『「こち亀」社会論 超一級の文化史料を読み解く』(イースト・プレス)、『ぼくたちの離婚』(KADOKAWA)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)。編著に『ヤンキーマンガガイドブック』(DU BOOKS)、編集担当書籍に『押井言論 2012-2015』(押井守・著、サイゾー)など。

漫画・大日野カルコ/神戸出身の漫画家・イラストレーター。別冊少女マーガレットにて別名義でデビューし、改名後はブログ漫画や商業イラストの執筆でも活躍中。現在『どうせなら、こじらせと仲良く生きたい。』を毎日が発見ネットで連載中!

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