読み進めるほど謎が深まっていくミステリーコミックエッセイ『怖いトモダチ』。岡部えつさんの小説を、漫画家でイラストレーターのやまもとりえさんがコミカライズしました。「人間って怖い...!」「一気読みした」「こういう人っているよね」と、大反響の作品です。
人気エッセイスト・中井ルミンを中心に、交錯する人々の言い分と思惑。人々が口にするエピソードは、あちらこちらで食い違っていき、読むほどに誰が真実を言っているのか分からなくなる...
今回は、漫画家・やまもとりえさんに本作やキャラクターについてお話を伺いました。
『怖いトモダチ』あらすじは...
人気エッセイスト・中井ルミン主宰のオンラインサロンは「みんなで幸せになろう」が合言葉。サロンには大勢のファンが集まり、どんな悩みにも寄り添い、尊敬できて魅力的な存在として、ルミンは慕われていました。しかし、奇妙な違和感があって...。
ルミンは、自身のブログに「中学時代の同級生・Sちゃんの思い出」を書いていました。Sちゃんは酪農家の娘で、同級生から「牛の糞臭い」といじめられて不登校になったこと。ルミンの提案で「Sちゃんのいいところ」をクラス全員にあげてもらい、手紙にまとめて渡したこと。そして、学校に来るようになったこと。けれど、そのブログを偶然読んだ旧友は、
「このブログ...うそばっかり。だって沙世ちゃんあの次の日、自殺未遂を起こしたのに...」
カリスマエッセイスト・中井ルミンーーその"真実の顔"とは?
無自覚で魅力的なだけに厄介...中井ルミンのこと
――自分に心酔するサロン会員のブログから文章をマネたり、婚約者のいる男性を奪ったり...。自分が有利になるように、着々と事実を捻じ曲げて我が道を突き進んでいく中井ルミン。率直にお尋ねしますが、中井ルミンという人物をどう思われますか?
やまもとりえさん:ルミンは魅力的なだけに、近くにいると厄介なのかもしれないなと思いました。ただ、原作者の岡部先生とのやりとりで「ルミン自身は悪いことをしてる自覚がない」と伺っていたので、あくまで純粋なルミンを描かせてもらいました。
――私たちの身近にも実際にいそうなタイプでもあり、ゾッとしました。やまもとさんご自身にも似たような経験はありますか?
やまもとりえさん:常に被害者でいたい方なら周りにいました。例えば、アドバイスを求められて「人それぞれだと思うけど、私だったからこうするかなぁ」という答えかたをしても、「私は嫌だったのにやまもとさんにやり方を押しつけられた。悲しい。」と他の人に言ってたり...とか、でもルミンとは少し違うタイプかもしれません。
――もしも今後、ルミンのような人に出会ったとしたら...やまもとさんならどうしますか?
やまもとりえさん:ほどよい距離をとらせていただきたい。でも、気づいてないだけで自分もルミン側だったらどうしようというのは描きながら考えました。無自覚というのが1番怖いですから。
小説版とは異なる結末「ルミンなら、こうする?」
――この作品は「自己愛性パーソナリティ障害」をモチーフにしているそうですが、この病気を描くにあたって勉強されたことや意識したことについて教えてください。
やまもとりえさん:編集さんから参考文献を送っていただいたのでそちらを読んだり、動画で説明しているものをいくつか観させてもらい、同じ障害でもいろんなタイプがいることを学びました。ルミンを悪者にしすぎないことは意識しましたが、出来ているかはわかりません...。
――特に印象に残っているシーンはありますか? その理由を教えてください。
やまもとりえさん:優美の回想シーンです。ルミンという人間を1番説明できているシーンかなと思ったので。
――物語の結末は小説版と大きく違いますが、どのような意図で描かれたのでしょうか?
やまもとりえさん:最初にお話をいただいたときに「結末を変えていただいて大丈夫です」とおっしゃっていたので、私なりに「ルミンならこうするかな?」と考えて描かせてもらいました。
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読むほど明らかになる中井ルミンの本当の"怖さ"。彼女のような人があなたの周りにもいるかもしれません。もしくは、気づかぬうちに自分が"ルミン側"になっているかも...?