大切なことを教えてくれる絵本3冊。子どもも大人も感動/鎌田實の人生図書館(4)

「読書は人生の羅針盤の役割を果たしてくれた」
実の親に捨てられ、養父に育てられた鎌田實先生。貧乏な家庭の事情をわかってくれていた学校の先生が「図書館の本を何冊でも借りていっていい」と言ってくれたことが、人生を変えていったといいます。そんな鎌田先生の人生を支えた名著から、コロナ禍のなかで読みたい本、子どもの心を動かす絵本まで、渾身の読書案内を連載形式でお届けします。

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【前回】コロナ禍の今こそ読みたい。幸せに生きるヒントをくれる名著/鎌田實の人生図書館(3)

【最初から読む】僕の人生を支えてくれた名著と、「おもしろい生き方」を教えてくれた名著/鎌田實の人生図書館(1)

カマタの好きな絵本ベスト10

とにかく絵本が大好きです。

その中でも特に好きなナンバーワンは、ライオンと鳥の友情を描いた『100年たったら』(石井睦美文、あべ弘士絵、アリス館)。

何度読んでもジワッと涙腺を刺激します。

子どもも大人も感動する作品です。

昔、一頭のライオンが広い草原に住んでいました。「自分は動物のなかでいちばんの王」と思っていましたが、獲物になる動物は食べ尽くしてしまって、草原には虫しかいません。

ある日、草原に一羽の鳥が降り立ちました。

ライオンが近づいても逃げません。

「なんで逃げないんだ」とライオンは聞きました。

わたしは もうとべない。あんた、 おなかが すいているんでしょ? わたしを たべたらいいわ。
あいにくおれは、にくは くわないんだ。おれのこうぶつは、草と虫さ。

ライオンは見栄っ張りで寂しがり屋なのです。

それからというもの、両者の間に友情が生まれます。

いっしょに虫を食べ、鳥はライオンのたてがみの中で眠り、歌を歌います。

月の綺麗な夜、鳥はライオンの背中から転げ落ちるようにして、地面に降り立ちました。

「わたし、もういくよ」と、鳥は いった。
こんな夜に、どこにいくんだよ。

ライオンは、鳥がどこに行こうとしているのかを悟って、泣きました。

「いやだよ。あしたも 虫をたべよう」、そういいながらライオンは泣いていました。

「また あえるよ」と、鳥は言いました。

「いつ?」

「うーん、そうだね、100年たったら」

朝が来ました。

胸にひっそりと鳥を抱いたライオンがいました。

100年たって、ライオンは岩場にはりつく貝になっていました。

鳥は海の波になっていました。

とてもロマンチックな話です。

絵本という形でなければ、オジサンには照れくさいような物語ですが、絵の素晴らしさも手伝って、素直に感動してしまいました。

こんなふうに、時々、絵本と自分の人生を重なることができる作品に出会います。

幸せを感じる瞬間です。

何がいちばん大切か? をもう一度問いかけてみる

第2位は『100万回生きたねこ』、佐野洋子さんの作品です。

サーカスの手品師になったり、泥棒や船乗りにもなった猫。

みんながこの猫を可愛がります。

何度も死にます。

死んだとき、みんなが泣きます。

でも猫は、一度も泣きませんでした。

この潔い生き方が、とても好きです。

しかし、大ドンデン返しがあります。

この猫は、最後に大切なことに気がつきます。

死ぬのが平気だった、自分が大好きな猫。

誰かが泣いてくれることよりも、自分が納得して生きて、納得して死んでいけばいいと思っていた猫が、変わるのです......この本を何度も繰り返し、読んでいます。

第3位は、『3つのなぞ』(ジョン・J・ミュース作・絵 三木卓訳、フレーベル館)です。

僕が好きな作家の9位に挙げたトルストイからヒントを得ているようです。

でもこの絵本、絶版になっていて、残念ながらなかなか手に入りません。

2020年、コロナ騒ぎのとき、この絵本の古本を探しました。

そのときは5000円、夏が終わる頃、この本を「まちかどライブラリー鎌田図書館」に寄贈しようと思って、もう一度探したところ、なんと1万5000円を超えていました。

「いつがいちばん大事なときか?」「いちばん大事な人は?」「何をするのがいちばん大事なのか?」......ニコライという少年が、この3つの疑問を友人たちに訊いて歩きます。

「いつ」という問いに、友人の鷺はこう答えます。

「前もってよく考えておかないと、わからないわよ」

友人の猿は、「いつも、まわりをよく見ていればわかることだよ」。

犬は「ひとりでやろうとしないで、なかまにも、たすけてもらわなきゃ」と忠告をしてくれます。

「いちばん大事なこと」を探して歩きますが、なかなか答えが見つかりません。

なんでも知っている亀を訪ねます。

亀はシャベルを使って、土を耕していました。

少年は、シャベルを借りて畑を耕しながら、大切なことを訊きます。

事件が起きます。

そして「大事なこと」に気がついていくのです。

図書館でぜひ、この『3つのなぞ』を借りて、読んでみてください。

【次回】心を軽くしてくれる絵本。大人が大切なことに気がついていくはず/鎌田實の人生図書館(5)

【まとめ読み】『鎌田實の人生図書館』記事リスト

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鎌田 實
1948年東京生まれ。医師・作家・諏訪中央病院名誉院長。東京医科歯科大学医学部卒業。 1988年に諏訪中央病院院長、2005年より名誉院長に就任。地域一体型の医療に携わり、長野県を健康長寿県に導いた。 日本チェルノブイリ連帯基金理事長、日本・イラク・メディカルネット代表。06年、読売国際協力賞、 11年、日本放送協会放送文化賞を受賞。 著書多数。

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『鎌田實の人生図書館 あなたを変える本と映画と絵本たち400』

(鎌田實/マガジンハウス)

世界を広げてくれた400を超える本や絵本、映画を取り上げ、生きること・死ぬこと、人生の面白さや心の機微にいたるまで鎌田流に渾身の読書案内! 本は世界で起きていることへの関心を持ったり、物事を考えるうえでの武器にもなります。さらに心の健康づくりのヒントにも。

※この記事は『鎌田實の人生図書館 あなたを変える本と映画と絵本たち400』(鎌田實/マガジンハウス)からの抜粋です。

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