『16歳で帰らなくなった弟』の著者のきむらかずよさんに、弟さんについて、そして当時の心境についてお話をうかがいました。
――16歳で突然逝ってしまった弟さん。どのような弟さんでしたか?
きむらかずよ「目立ちたがり屋でやんちゃで、誰とでもすぐに友達になる弟でした。
子どもの頃から、友達のことを悪く言われるのを何より嫌い、私が弟の友達を悪く言ったりすると、すごく怒りました。
意外に繊細な部分もあり、布団のずれが気になって布団の端と端にお裁縫をしたりもしていました」
――弟さんと自分が全然違う所、また似ているなと思う所はどこですか?
「全てにおいて真逆だった姉弟でした。私が陰で弟が陽のような。
弟はおしゃれで私は服に無頓着だったので、私の服の着方がずれてたりすると弟が直してくれることもありました。
似ているところはお互いが負けず嫌いだったことかもしれません。なので、小さい時は凄まじいケンカをところ構わず繰り広げていました」
――身元不明の女の子、を描くときにとても辛かったとありました。改めて描くことに迷いがあったこと、そして描くと決めた時の心境を教えていただけますでしょうか。
「弟のことを描くのには迷いはありませんでした。彼との約束だったので。
でも、女の子は嫌ではないだろうか。
自分だったらどうだろうと何度も考えました。
心の中で、女の子に話しかけたことも一度や二度ではありません。
描かないでおく方が、私も正直楽でした。身内のことだけあったことだけ淡々とかけばいいので。
けれど、女の子はどうなんだろう...。
悩みに悩んだ末、『忘れられること』『なかったことにされること』が1番亡くなった人にとっては悲しいことではないだろうか、とも考え、大切に大切に描きました。
私は、単なる被害者ではない、弟が女の子を乗せてしまった、という十字架をいつも背負って描いていました」
――弟さんはきむらさんにとってどんな存在でしたか?
「自分にないものを全部持っているような存在で、心のどこかでいつも羨ましかったですね...」
かけがえのない存在だった弟さんをある日突然亡くしたきむらさん。
私たちが毎日当たり前と感じていることは、実は当たり前じゃないのかもしれません。
家族との毎日は、ある日突然なくなるものなのかもしれないという可能性について考えさせられます。