味や香りが豊かになる、栄養を吸収しやすくなる! 発酵食品の4つの魅力/発酵食品

pixta_8162876_S.jpg「発酵食品」という言葉で思い浮かぶものは何ですか? みそ、漬物、ヨーグルト...どれも保存性が高く、栄養にも優れているといわれています。それはなぜでしょうか。東京農業大学応用生物科学部醸造科学科教授の前橋健二先生にお話を伺いました。

前の記事「発酵食品とは? 納豆や麹、ヨーグルトが体にいいのはなぜ?/発酵食品(1)」はこちら。

 
多様な成分を含むことで生まれる発酵食品の魅力

発酵食品は微生物が増殖するためにエサを食べ、代謝物を出すことで物質に変化が起き、それにより生み出されるものです。

「微生物が持つ酵素の力でアミノ酸やたんぱく質を分解し、その過程でさまざまな成分が生まれます。それらが機能性のある成分だったり、味や香りのもとになったりと、さまざまな働きをしてくれます」と前橋先生。
その働きが、発酵食品の滋味深い味わいや栄養成分を生み出してくれているのです。

発酵食品の魅力は主に「味や香りが豊かになる」「機能性成分が生まれる」「体内に栄養を吸収しやすくなる」「保存性がアップする」の4つ。

「発酵食品は微生物の培養物のようなもので、有用な物質がたくさん蓄えられています。それを摂取することが健康に良いということを、私たち人間は経験的に知っていました。それが近年、科学的にもいくつか解明されてきています。例えば、麹菌の働きででんぷんが分解されてブドウ糖ができる『麹』は、その糖を摂取することで私たちのエネルギーの源になる。また分解するときにフェルラ酸などの抗酸化物質が生まれるので、麹には抗酸化作用があります」(前橋先生)

 

1.味や香りが豊かになります!
微生物が酵素でエサを分解する過程で物質の変化が起きます。これが発酵です。その過程で味や香りが生まれます。

「例えば、でんぷんには甘みがありませんが、微生物に分解されて糖になることで甘みが生まれます。たんぱく質は分解されることでアミノ酸ができ、うま味が生まれて味に深みが出るのです」(前橋先生)

また、微生物の代謝物は味だけでなく、香りの成分にもなります。
「しょうゆは香りが高いですが、それは原料が乳酸菌や酵母の働きで分解されることで、HEMFと呼ばれる香りの成分などが生まれるためです。特に酵母菌が発酵すると香りが豊かになります」(前橋先生)

 

2.機能性成分が生まれます
「発酵食品は天然の機能性食品です。みそや納豆の原料である大豆、日本酒の原料である米など、原料にももともとの栄養成分はありますが、微生物が増殖する過程で食材の成分にないものを生み出されるのです」と前橋先生。

抗ピロリ菌作用があるといわれる納豆のジピコリン酸、美肌効果があるといわれる米の発酵成分であるコウジ酸などがそれです。

 

3.栄養を吸収しやすくなります
私たちは食事をしたら胃や腸で消化・吸収をします。発酵食品は発酵の過程で微生物がでんぷんやたんぱく質をすでに分解しています。そのため体に負担をかけず、スムーズに栄養成分を吸収することができます。

 

4.保存性がアップします
保存性がアップする理由は2つあります。
1つは微生物の生存競争です。微生物はある種がたくさん繁殖すると、他の微生物が増殖できなくなるという特性があります。人間にとって有用な菌をすみやかに増殖させることで有害な腐敗菌が育たなくなるのです。逆に腐敗菌の繁殖の勢いが速く優勢になると食品は腐ってしまいます。

2つめは微生物の種類です。微生物自体に殺菌作用があるものがあります。例えば乳酸菌は乳酸菌自体に抗菌作用があり、酵母もアルコールを作り出すことで他の菌が増殖できなくなります。
「発酵食品を作るときに塩を加えるのは殺菌のためですが、塩分が高濃度でも増殖できる菌がいます。それがみそやしょうゆを作り出す微生物です。ありがたいことにその特殊な微生物は毒を持たないため増殖しても害はなく、食品をおいしくしてくれています」(前橋先生)

 

 

私たちにこんなにもたくさんのおいしさを届けてくれる発酵食品。特に日本は、みそやしょうゆなど発酵食品を調味料として使っているため、日常的に食しているのが日本人の健康の源だと前橋先生は言います。

「微生物の種類は多く、いまわかっている以上にもっとすごい力を秘めているかもしれないというのが発酵食品の奥深さです。発酵食品には1つの成分が大量に入っているわけではなく、多様な成分が自然なバランスで含まれていて、その複雑さがおいしさであり、健康につがなるのです」(前橋先生)

 

次の記事「発酵食品は調味料で摂る! 塩麹、みそ、酢のおいしい効果/発酵食品(3)」はこちら。

取材・文/ほなみかおり
※参考資料:『すべてがわかる!「発酵食品」事典』(小泉武夫・金内 誠・舘野真知子監修)、『図解でよくわかる発酵のきほん』(舘博監修)

 


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前橋健二(まえはし・けんじ)先生

1969年生まれ。東京農業大学応用生物科学部醸造科学科教授。1994年東京農業大学農学研究科醸造学専攻修士課程修了、1999年博士号取得(農芸化学)。味や香りなど発酵調味料の特性をさまざまな科学的なアプローチにより研究している。著書に『旨みを醸し出す麹のふしぎな料理力』(共著、東京農業大学出版会)など。テレビや雑誌でも活躍中。

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