発酵食品とは? 納豆や麹、ヨーグルトが体にいいのはなぜ?/発酵食品

pixta_19561403_S.jpg納豆、漬物、しょうゆ、みそ...日本は発酵食品大国といってもいいほど私たちの食卓には発酵食品があふれています。では、そもそも発酵食品とはどういうものなのでしょう。東京農業大学応用生物科学部醸造科学科教授の前橋健二先生にお話を伺いました。

 
「発酵」と「腐敗」の違いとは?

発酵食品であるかないかは"微生物"がかかわっているかどうかだと、前橋先生は言います。発酵食品は保存食がもとになって発展してきたと考えられています。

「塩漬けにする、アルコール漬けにするなどして食品を保存するということが始まりで、保存しておくと何かしら微生物が湧いてきて発酵し、食品が変化します。その変化したものがおいしくて体に良いと、人は経験から学び、作られるようになったのではないでしょうか」

微生物はエサを食べて増殖します。微生物が持つ酵素の作用でエサを分解しますが、そのときの物質の変化によって生み出されるのが発酵食品なのです。

「微生物の作用で生み出される物質が、人間にとっておいしいく、有益なものであれば"発酵"といいます。逆に有害なものであれば"腐敗"といいます。例えば牛乳に乳酸菌を加えると菌の力でヨーグルトという発酵食品になります。しかし牛乳をそのまま放置しておいたら腐ってしまいますが、これも微生物の作用によるもの。発酵と腐敗はそもそも同じもので、人間に有益か有害かによって決められたものです」(前橋先生)

 
発酵にかかわる微生物の働きとは?

目に見えない微生物は空気中、土の中などあらゆるところに生息しています。その中で発酵にかかわる菌は大きく3つに分類されます。「カビ」(麹菌、アオカビなど)、「酵母」(酵母菌など)、「細菌」(乳酸菌、納豆菌、酢酸菌など)です。

そして麹菌、酵母菌などそれぞれの菌にもさまざまな種類があり、原料の性質に適した微生物(菌)が選ばれて発酵食品は作られています。また、1つの食品に1種類の菌が使われているわけではなく、複数の菌で作られるものもあります。特に日本の調味料は複数の菌により、深い味わいが生み出されています。

 

●麹菌
しょうゆ、みそ、みりん、日本酒など、日本のさまざまな発酵食品にかかわっています。そのため、「国菌」とも呼ばれます。消化酵素を大量に作り出すのが麹菌の特徴で、それにより米や大豆のでんぷんやたんぱく質が分解されます。

「麹菌が原料を分解することで他の菌のエサになることもできます。発酵食品を作り出すうえでのベースを作ってくれるのが麹菌のすごいところで、日本の食文化には欠かせないものです」(前橋先生)

☆麹菌で発酵した食品/しょうゆ、みそ、みりん、日本酒、酒かす、米酢など

pixta_15747518_S.jpg

 

●酵母菌
清酒酵母、ビール酵母、ワイン酵母などがあり、おもに酒造りに使われます。酵母菌の働きでアルコールが発生するのです。

「なかでも清酒に使われる酵母菌がアルコールを作り出す力が最も強く、そのためワインやビールに比べてアルコール度数の高いお酒を造り出すことができます。また、発酵により香りが良くなるというメリットもあり、酒造りの技術が生かされて香り豊かなこいくちしょうゆが造られています」(前橋先生)

☆酵母菌がかかわる発酵食品/日本酒、ビール、ワイン、しょうゆ、みそ、パンなど

pixta_25262118_S.jpg

 

●乳酸菌
乳酸菌は乳酸を分泌して物質を酸性にします。酸性になると殺菌力が高まり、保存性が良くなることから、ヨーグルトやチーズ、漬物が作られています。
「醸造食品にも乳酸菌は欠かせません。しょうゆやみそ造りにはおもに麹菌が使われますが、食塩に強い乳酸菌が加わることで安定して熟成することができるのです」(前橋先生)

☆乳酸菌がかかわる発酵食品/ヨーグルト、チーズ、漬物、しょうゆ、みそなど

pixta_21575012_S.jpg

 

●酢酸菌
通常、殺菌作用のあるアルコールの中で菌は死滅しますが、酢酸菌はアルコールの中でこそ力を発揮するのが特徴です。果物や穀類の糖からできたアルコールを酢酸菌の力で発酵させたものが「酢」で、これを酢酸発酵といいます。

「日本なら日本酒から米酢が、ヨーロッパならシードルからりんご酢、ワインからワインビネガー...と、お酒があるところには酢があります」(前橋先生)

☆酢酸菌がかかわる発酵食品/酢など

pixta_40311261_S.jpg

 

●納豆菌
納豆菌はおもに納豆の製造に用いられますが、菌類の中でも非常に繁殖力の強いパワーのある菌です。

「納豆菌は熱、低温など過酷な状況に置かれると"芽胞(がほう)"という構造の休眠状態になります。菌は死なず、繁殖に適した環境になると再び発芽して繁殖するのです。蒸した大豆に納豆菌を吹きかけて置いておくだけで菌がびっしりついた納豆ができ上がるというのは、その繁殖力のたまものです」(前橋先生)

☆納豆菌がかかわる発酵食品/納豆

pixta_35185286_S.jpg

 

発酵を促すおもな微生物の種類と、微生物がかかわる食品

zu_hakkou_re.jpg

 

次の記事「味や香りが豊かになる、栄養を吸収しやすくなる! 発酵食品の4つの魅力/発酵食品(2)」はこちら。

取材・文/ほなみかおり
※参考資料:『すべてがわかる!「発酵食品」事典』(小泉武夫・金内 誠・舘野真知子監修)、『図解でよくわかる発酵のきほん』(舘博監修)

 


maehashi.jpg

前橋健二(まえはし・けんじ)先生

1969年生まれ。東京農業大学応用生物科学部醸造科学科教授。1994年東京農業大学農学研究科醸造学専攻修士課程修了、1999年博士号取得(農芸化学)。味や香りなど発酵調味料の特性をさまざまな科学的なアプローチにより研究している。著書に『旨みを醸し出す麹のふしぎな料理力』(共著、東京農業大学出版会)など。テレビや雑誌でも活躍中。

この記事に関連する「健康」のキーワード

PAGE TOP