「肺がんです。ステージ4の」50歳の僕への...あまりに残酷な「医師の宣告」/僕は、死なない。

「病気の名前は、肺がんです」。医師からの突然の告知。しかも一番深刻なステージ4で、抗がん剤治療をしても1年生存率は約30%だった...。2016年9月、50歳でがんの告知を受けた刀根 健さん。残酷な現実を突きつけられても「絶対に生き残る」と決意し、あらゆる治療法を試して必死で生きようとする姿に...感動と賛否が巻き起こった話題の著書『僕は、死なない。』(SBクリエイティブ)より抜粋。過去の掲載で大きな反響があった本連載を、特別に再掲載いたします。

※本記事は刀根 健著の書籍『僕は、死なない。』から一部抜粋・編集しました。
※この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。

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「病気の名前は、肺がんです」

2016年9月1日、人生が変わった。

都内にある大学病院の狭くて薄暗い廊下から診察室に入ると、白衣を着た医師が座って 待っていた。

「えー、こんにちは、担当をさせていただきます、か・け・が・わ、と申します」

眉間に深いシワが刻まれ、苦悩が顔に張り付いたような 50代半ばの男性だった。

「刀根(とね)です。よろしくお願いいたします」

「えー、検査の結果なのですけれども......」

掛川医師は言葉を選びながらも、僕の肺の状況を淡々と、そして詳しく説明し始めた。

「これ、あなたの左胸です。ここのところ、ちょうど鎖骨のちょっと下あたりに1・6セ ンチほどの影が写っています。これですね」

彼の指差すCT画面には、他とは明らかに違う白い塊が写っていた。

「それと肺の中の空気の通り道というのがですね、この真ん中の黒くなっているところな んですけれど」と言って胸の画像で真ん中に黒く写っている通り道を指差した。

「これが右と左の肺に分かれていく、2本に分かれていくちょうどこの小股のところに、 赤いところがあります。ここも怪しい」

彼の指差した分岐点が不気味に淡い赤色を放っていた。

「なので、内視鏡の検査ではもともとの左肺の影の部分と、ここの赤く腫れている部分と、 両方検査を行なわせていただいたということです」

「内視鏡......ああ、あの口からカメラ入れたやつですね」

僕はそのとてつもなく苦しかった検査を、ちらっと思い出した。

「そう。それで、その結果なのですが......どっちも治療が必要、という結果が出たんですね」

「治療? と言いますと?」

「その病気の名前は、肺がんなんです」

「......」

「で、肺がんのうちの、顕微鏡で見た顔つきでは、腺(せん)がん」

「両方ともですか?」

「そう」

「体調はいたって元気なんですけど」

「肺がんは自覚症状が出たときには相当進んでいる可能性が高い病気なのです」

「普通に運動とかも、毎日してたりするんですけど」

「はい、気づかないケースがほとんどなのです」

「そうなんですか」

「はい。で、刀根さんの場合はどういうことかというと、母屋(おもや)がこちらで」

左胸の塊を指差した。

「もう片方はですね、大きくなるために必ず血管をまたいでいきます」

彼の指先がCT画面の上を動く。

どうやら左胸が母屋で、気道の分かれ道のところが転 移らしい。

「血管のそばには必ずリンパの流れがあって、その両方、あるいはそのどちらかを使って 病気が身体全体に広がります。今の段階では、これが腫れているだけでとどまらず、もう 1個内側のリンパの流れにまで領域が広がっているということがわかりました」

彼はそう言うと、左肺の中にある白い部分を指差した。

そこは明らかに右よりも大きく ふくらんでいた。

「リンパにも転移している、ということですか?」

掛川医師は眉間にシワを寄せてうなずくと、さらに続けた。

「で、さらに、さらに、ペット検査で診ると......」

「さ、さらに?」

「ここに緑色の部分がありますね」

彼の指先は僕の前側の肋骨下部を指していた。

ちょうど胃の真上あたりの骨だ。

そこが ほんのり緑色に光っていた。

「これがですね、ここだとちょっと......」

「ちょっとって?」

「あのー、背中が痛いとか、刀根さんにはないでしょうか?」

掛川医師は言いづらそうに 言葉を続けた。

「ないです」

いやな予感がする。

「特にないんですね?」

「はい」

「あのー、今の段階で言いますとですね......えっとペット所見があって......お見せいたし ます」

モニターの画面を切り替える。いやな予感がさらに増す。

「病気が進行している可能性があります」

掛川医師は上目づかいに言った。

「進行?」

もう一度念を押すように、掛川医師は説明を始めた。

「で、えー、さっき言ったリンパっていうのはですね、左の肺はい門もんという場所」

「あ、さっきの分かれた部分ということですね」

僕は確認するように言った。

「そう、ここと左胸にがんがありますよ、ということになります。あとリンパで、さらに ......」

「さらに?」

「胸骨」

「胸? 胸骨⁉」

僕は慌てた。

「ここなんですが、これも......」

医師は再びモニターを指差す。

「転移している?」

思わず聞き返す。

「はい、転移している可能性があります。それで、あとですね」

「ま、まだある?」

「それで......ほんとに所見的にはですね......あのー、肺の中なんですけれど......空気は基本的に黒く写るんです」

掛川医師は言いにくそうに話した。

「はい」

確かに僕の肺はほとんど黒かった。

「肺は風船の集まりなんで、黒いところがメインなんです。この白い筋は血管です。これ、 あなたの右胸のほう」

掛川医師は今度は右胸のCT画像を指差した。

「血管とは似ているんだけど、ここにあるプチとか、ここにあるプチとかは血管のように 見えて実は血管でない可能性がある」

僕にはその区別がつかなかったが、掛川医師は続け た。

「まー、あのー、私たちはそういったうがった目で診ていかなきゃいけないんですけど、 そうするとですね、右側の肺にもそういった場所があるのかもしれない」

「それは、右胸にも転移しているということですか?」

「うん、そう。まー、今の段階で言いますと、ペット検査で骨のことを考えないで赤いと ころだけ、骨以外の赤いところだけ、この部分と、この部分と、この部分」

掛川医師は画 面を一つずつ指差した。

「骨を入れない状態で、進行度は3のAという病期になります」

「ステージ3ですね」

「はい」

「で、骨のところまで考えますと、これ4期」

「4期......ステージ4ってことですね」

「そう。で、3A期または4期だけど、まあこの所見上からいうと4期と捉えたほうがい いのではないかと」

「うーん」

僕は言葉を失った。

 

刀根 健(とね・たけし)

1966年、千葉県出身。東京電機大学理工学部卒業後、大手商社を経て、教育系企業に。2016年9月1日に肺がん(ステージ4)が発覚。翌年6月に新たに脳転移が見つかるなど絶望的な状況の中で、ある神秘的な体験し、1カ月の入院を経て奇跡的に回復。ほかの著書に、人生に迷うすべての現代人におくる人生寓話『さとりをひらいた犬 ほんとうの自分に出会う物語』がある。オンラインサロン「みんな、死なない。」および刀根健公式ブログ「Being Sea」を展開中。

この記事は『僕は、死なない。 全身末期がんから生還してわかった人生に奇跡を起こすサレンダーの法則』(刀根 健/SBクリエイティブ)からの抜粋です。

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